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    masasi9991

    @masasi9991

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    演技のお仕事のあとのかぶもも

    ##かぶもも

    感情のまま 普段と違って首元まできっちり結んだネクタイをやっと緩められた。ちょっと緊張してたかも。作り笑いは得意なんだけど。
     今日はぴぃちゃんが「いつもよりも自然な表情ができてますよ」なんて収録の合間に言うものだから、思ったような作り笑いができてなかったのかも。自分がどんな顔でカメラに映っているのか気になって、変な顔してるんじゃないかって……。でもぴぃちゃん、褒めてくれた。だからそれが正解。最後まで自然な表情、正解で居続けられただろうか。意識しちゃうと、作り笑いより難しかった。緊張はそのせいかな。
     ネクタイだけ少し緩めて、着替えは楽屋に――楽屋代わりになってる事務所の小さな会議室に、置いてある。今日の収録は315ビルの休憩室を使ったから。最近、配信のお仕事をビルの中で撮ることが結構多い。普段私服で出入りしてる場所を、配信用とはいえ衣装で歩き回るのはちょっと不思議だ。
     楽屋に向かう途中で、ラウンジの前を通り掛かる。スタッフさんやぴぃちゃんは配信のお片付け中。でもラウンジにも、誰かいるみたいだ。
    「お」
     飲みかけの紙パックのジュースから口を離して、かわいい小さな頭がこっちを振り向いた。髪の毛、ちょっとふわふわしてて、振り向いたとき毛先が跳ねて揺れたのがかわいい。細く白いストローに、小さく口をすぼめて吸っていたのもかわいかった。
    「収録じゃったんか?」
    「うん。よくわかったね」
    「いつもと違う制服を着とるからのぉ。それが衣装じゃな?」
    「そうだよ。さっきまで恋愛ドラマ風のリモート劇をやってたんだ」
    「生配信か? 教えてくれれば見れたんじゃが」
    「生で見られるのはちょっと恥ずかしいな。もうアーカイブ、上がってると思うけど」
     僕がそう言い終わる前に、兜くんはスマホを取り出して、机の上で配信ページを探し始めた。動画サイトの315プロチャンネルを開くと、最新のオススメにもう入っていて、タップする前に再生が始まっている。
    「演技のお仕事、まだあんまり慣れないんだ」
    「そうは見えんぞ! 百々人は実にいい顔をしとる! ほら、今なんかはなまる笑顔じゃ!」
    「ん。……まだ始まったばっかだよ?」
    「おお、そうじゃな」
     兜くんはそう返事をして、机に置いたスマホの小さな画面を食い入るように見つめた。
     こっち見てない、から、僕がいま顔を真っ赤にしてるのはバレてない。でも画面の中にも僕が居る。兜くんはそっちをじっと見つめてる。
     笑顔……そっか。ぴぃちゃんが褒めてくれた。兜くんもはなまるだって。画面の中の僕は、自分のセリフのたびに、他の人のセリフのたびに、表情を微妙に変えている。ちょっとぎこちない。こんなに顔の筋肉動かしてたっけ。僕にはいつもの作り笑いの方が、安定してていいんじゃないかって思えてしまうけど。
     でも、それが「自然な表情」か。
    「おおぉ、わかったぞ。園芸委員長は、このヒロインのことを密かに想っとる。つまりバラの花びら事件の犯人は、園芸委員長……つまり百々人じゃな!」
    「んー、ふふふ。どうかな? この先のネタバレになっちゃうから言えないなー」
     って、そんなふうにはぐらかしたら答えを言ってるみたいなものだけど。なんでバレちゃったんだろう。まだ核心に迫るセリフは出てないよね。画面にはキャストの顔しか映ってないし……どうしてだろう。
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