わたあめ キミの口の中に入っていくにしては、ちょっと小さかったかなと思ったけれど。
「あーん」
「あーん……もぐ」
大きな口はわたあめを通り越しておれの指までがぶっと食べてしまった。
「あははっ。もっと大きくちぎるべきだったな。ふっふっふ、くすぐったい」
「ムム? しまった! おまえの指まで甘かったものだから、つい」
「かなり指にくっついてしまうんだ。このくらいの大きさならどうだ? あーん」
「あーん! ムムム。もっとあーん! む!」
口を大きく開いて、がぶっと行く前にちらっとおれのつまんだわたあめの大きさを確認する。これでは足りないとばかりにもうもう一段階大きく口を開く。これ以上は無理だ、というところまで開けて、さらに首を傾げてかぶりつく位置を考えた。それから満を持して、がぶり。
「今度は大きすぎたか」
「ううむ。しかし食べてしまうとあっという間にしぼんでしまう」
「もう一つ買ってこようか」
「しかし晩ごはん前だからな。あとでみんなで焼きそばとたこ焼きも食べねばならない! ここは我慢しなければ」
すぐにとけてしまったわたあめの名残を惜しむように、キミはおれの指にちゅーっとキスをした。
大きくフワフワのこのお菓子は、食べようとかぶりつくとあちこちにベタベタくっつくからそれほど好きではなかったんだが。
キミの大きな口にかかれば大きかったわたあめも残りもう少ない。こんなに名残惜しく思うようになるとは。