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    hayame

    @Dream112_story

    Xのアカウント乗っ取りかけられたので、今は鍵でのんびりして…いたら規約が変わったのでここに投げてTwitterに投げます。

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    hayame

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    終わらない妄想の前座、本筋にすらたどりついていない。
    一応病ん…な️🫧ちゃん書きてぇなと思っているやつ、病ん…は定期的に書きたくなるんですよね。そのうち完成はさせたい

    ―目が覚めると、そこはイタリアだった。

    こんなCMがたしかあったな、なんて呑気なことを思いながら見慣れないレンガの道を歩く。
    (私の夢にしたら、すごい再現率だ。)
    凍えてしまうほどの冷たい風も、空を差す太陽の暖かさも、脚に感じる緩やかな疲労も…まるで現実であるかのように身体にじわりと染み付いていく。
    …今いるここがなぜイタリアなのだと分かったのか、正直不思議でならない。ここは人の子1人もおらず、薄暗い上に標識が全くない路地裏で一見どこにいるのかの判断材料は何一つとしてない。それでも何故か『ここはイタリアである』と、そして『ローマである』と頭では理解していた。
     ―まるでここに来たことがあるかのように
    (…といっても、気のせいだよね。きっとローマって判断したのはあの子が好きな漫画のワンシーンだったとかでしょ。…寝る直前になに読んでたのかな。)
    どうせひと時の夢なのだけど漫画の世界に入り込んだと話せばきっと―イタリアを舞台にした少年漫画が好きだったような友人も喜ぶだろう…忘れてしまうかもしれないけど探検してみようと、私は光の見える方へ向かって歩き始めた。
     
    ―Non importa quante volte io rinasca, tu.―
     
    ここがローマと理解しても入り組んだ路地裏の出口は分からない。宛もなく光の方へ進んでも、現れるのはまた複雑なレンガ道だけ…イタリアで有名なコロッセオとかが見えれば、そこに向かって行けるのだろうがそれも見えず。なんなら雑誌で見た事のあるイタリアとは異なる、少し寂れたような…なにか爆発でもしたのか崩れた建物達は段々と私を不安にさせる。それでも行く宛てもなくただ路地裏を歩き続け…体感数十分の時間が過ぎた。
    出口も分からないから、行儀は悪いが少し端で休憩をしようと足を止めると後ろでばさりと何かが落ちる音がした。静まり返った路地裏に響く音に大袈裟なほど反応して、恐る恐る振り向けば薄茶色の紙袋からころりと転がるリンゴと、それを落としたであろう金色を纏う男性がこちらを見ている。わあ、現地の人かな?助かった…そう思う瞬きの間、先程まで数メートル向こうにいた男性は靡く金糸と今にもこぼれ落ちそうなほど翠瞳を見開き、私の両肩を掴む。近くで見た男性は瞳の横にある両のアザは独特の雰囲気を持ち彼の美しさを引きたてて、本来であれば見ず知らずの人に肩を捕まれるなんて怖いはずのシチュエーションを緩和させるほどの強い安心感を抱く自分がいた。
    「ッ!Voi…!」
     (なにか凄い顔が切羽詰まった感じっぽいんだけど…まっっっったく何言ってるか分からない…。CMだとなんかよくわからないけど言葉通じてたじゃん〜…こんなとこは現実的すぎる夢…)
    目をぱちぱちと瞬かせどうにか聞き取ってみようと試みても英語ですらないその言葉を1つとして聞き取ることは出来ず。掴まれた両肩が解放されない今の状況では、ぎゅっと眉間にしわ寄せ、切羽詰まった様子の男性をただ見上げることしか出来なかった。
    「ah…Do you understand English」
    男性は少し落ち着きを取り戻した後、私が困ったように見えたのか眉間に皺を寄せる以外何も答えず反応も見せない様子に言葉は通じていないと察したのだろうか…先程とは打って変わってただ一言、英語で私に質問した。
    ……ただ生憎、私は英語もほとんど分からない。こんなことならちゃんと勉強しておけばよかったと後悔する程度には分からないのだ。幸い、今言われたことはなんとなく分かるけど、このまま英語で会話し続けられるほどの英語力など私にはない…ここは素直に分からないと伝えよう、言い直してくれた彼には申し訳ないが。
    「あー…あい どんと あんだーすたんど…」
    「Hmm…」
    口元に人差し指を添え、考え込む男性。わあ、イケメンって眉を潜めても絵になるなぁ。なんて呑気なことを考えているが、今だ肩に乗せられた片方の重みは離れない。離しても別に逃げやしないのに。でも困ったな、言葉が分からないのにどうやって─
    「なら、これ…わかる?」
    「!」
    少しして男性から発されたのは日本語だ。カタコトだけど言葉が通じなかったさっきよりも心強い。コクコクと強く首を縦に振れば、男性は言葉が通じたことが心底嬉しいというかのように目を細め、ふわりと笑った。
    「言葉分からない、ここあぶない。おれ、家きて」

     ――――

    男性に導かれるままたどり着いたのはレンガの路地裏を抜け、市街から外れた…日本で言うアパートのような作りをした建物。これがきっと彼の言っていた「俺の家」というところだろう。
    階段を上がりきった先…鍵のかかった扉の中は、引越してきたばかりなのか整理されていない物があちらこちらに置かれていてあまりにも生活感がない。その中を縫うように手を引かれて真新しいソファに案内されると待つように、というジェスチャーを残して彼は奥の部屋へと姿を消したのでやることの無い私はソファに身を預けてカーテンの無い窓をぼんやりと眺めることにした。
     ─ああ、レンガ道にいた頃はまだあんなに明るかったのに今はもう夕方なんだ。
    非現実的なのにどこまでもリアルな夢は、まだ醒めることはない。

    ◾︎◾︎◾︎

    …少しして、彼は何かを手に戻ってきた。
    ソファに座る私の目線に合わせるように立膝をついた彼は手に持った1冊の本を私に見せた。それはよく見れば手作りの日伊辞典のようで。私が何かを認識した後、彼はパラパラとページを捲り私を指さし…そのまま指を開いた辞書に滑らせてfiglio perduto―迷子という言葉を指した。
    (なるほど。これは『君は迷子?』ってことかな?…まあ状況的にはそうだよね。ここどこだか分からないし、夢から覚める…日本にどう戻るのかも分からないし…。)
    私が首を縦に振れば彼は頷き、次に自分を指さして口を開いた。
    「Caesar…ンンッ、シーザー。おれのなまえ。」
    「しーざー…。あ!えーっと…まい ねーむ いず 🌸」
    「🌸、🌸…。よろしく、🌸」
    先程までの日本語より随分上手く発音された私の名前を噛み締めるように繰り返す彼…しーざーは路地裏で出会った時以上に嬉しそうな瞳で私を見つめていた。
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