生まれてきた意味を 誕生日という物にはいい思い出がない。
初手から生まれた事を蔑まれた。そんな母が生誕を祝うなどありえないだろう。
その次はだだっ広いレイヴンロック家だが、ここも当然真っ当に祝われる事はない。それどころか祝福を反転して呪うような事ばかりこの身に降り掛かった。
赤くない目を抉ってやろうか、とデザート用のスプーンをちらつかせ、怯える自分を嘲笑う声。頭から浴びせられる元は豪華な食事。肌を炙る蝋燭の炎。肌に塗りたくられる生クリームと排泄するための器官への異物挿入。おめでとう、と笑わない目で掴まれた腕と引き裂かれた痛み。
どれを思い出しても辛さしかないそんな日になんて、とヒューゴは心の中で蹲る。
自分が欲しかったのはただ一言だった。それすら望んではいけないと言われる自分の生まれた日。
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