じゅていむ☆じゅていむねえねえ見てよ、辺り一面。
人があちこちで、
無様に、醜く、折り重なって。
前は戦の跡で
今は流行り病
たぁくさん、死んでいるのよ。
...ざまぁないわ!
【じゅていむ☆じゅていむ】
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「お志津よ。噂だと、この辺りらしいぞ」
くん...くん
「そうね。
間違いなさそう、匂いがする。
同胞の、幽霊族の匂いだわ!」
「よかったなあ。たしかもう...だいぶ数を減らして、おまえさんも同族の仲間に会うのは随分と久しいんだろう?」
ここまでの旅路を同行してくれたのは、昔馴染みの化け狸。
たまたま彼女が、この山へ用事がある為に出掛けようとした矢先、その噂を耳にして、私を誘ってくれたのだった。
「ねえ、お松。ここからは私一人で行かなきゃなのよね?」
「ああ。うちの客はあっちの里にいるんだ。終わったらまた落ち合おう、狼煙で知らせるからな」
「わかったわ、またね!」
峠の分かれ道で手を振り、友と離ればなれになった後、同族の私には感じ取りやすいその匂いを辿り、森の奥へと進んだ。
途中で気付いたのよね。
相手も、私の匂いを察知しているはずだって。
身を隠す必要もなく、隠すこともできない。だから山の中腹にある、森の開けた草原に、彼は立っていた。
「待っておったぞ」
「え、私を?」
「旅をしている同族が、近々この地まで来るやもしれん、と噂好きなカラスから聞き及んだのでな」
風が吹き抜けた。
白に近い銀髪が揺れて、私と同じ紅い双眸...だがしかし彼のそれは、まん丸の四白眼にちょんと乗った点のような虹彩であるが...をチラリと晒したものの、顔の左半分の髪は風が止むとまた暖簾のように閉じてしまった。
まだ二間弱の距離があったが、視力も含め人ならざる者である互いの容姿を知るには、その位置からでも十二分に過ぎた。
「ええと...はじめまして。
私、『 』。今は、市井では志津と名乗っているわ」
「わしは『 』。なるほど、本当に同胞のようじゃの。その発音は幽霊族独特の舌でなければ叶わぬ」
彼の外見は私よりも幼い...人間ならば十になるかならないかのそれだ。
ただし、私たちは肉体の成長速度に個体差がかなりあるため、そこから年齢を判断するのは難しい。
その落ち着いた物腰や話し言葉から考えれば、かなり年上とも受け取れる。
とはいえ、私は性格上...親しみをもって付き合いたい相手へは、かしこまった態度では接したくなかった。
幸い彼も、こちらの話し方については嫌そうにはしていないようだし、同年代のような素振りで会話してしまおうとこの時点で既に決めていたのだ。