嫌「だった」日両親が死んだのが、自分の誕生日だった
両親が自分の為に買い物へ行った先で起きた事故だった。2人は即死、忍は18歳、真冬はまだ7歳、小学1年生だった
どれだけ自分を憎んだか、どれだけ申し訳無かったか、言い表す事が出来ないような感情に襲われていた
自分が就職して収入が安定するまで置いてくれた叔父、彼が居なければ今頃苦しかっただろう。彼が居たおかげで勉学に集中出来た、有名企業に就職できた
……ただ、だからこそ苦しかった
親の代わりのように接してくれたからこそ、言ってくれたのだ
「誕生日おめでとう」と
……やめて、誕生日なんて来ないで
僕が誕生日だから、僕が主役になってしまったから
だから、父さんと母さんは
そんなふうに思ってしまう誕生日が、何よりも嫌いだった
2年前、真冬が誕生日プレゼントをくれた
「誕生日おめでとう」と、言ってくれた
嫌だったその言葉が、不思議と心地よかった
何よりも大切で、誰よりも愛しい真冬が、自分を祝ってくれた
それは何故か、誕生日だからだ
『……あ、り…がと』
上手く言えなかった。くすぐったかった。嬉しかった
そして今、不思議な友達が沢山できた。その人達も軽く言ってくれる
「誕生日おめでとう」と
両親の死を知っている身近な人のみが、申し訳なさそうに言っていた言葉
「誕生日おめでとう」
この言葉が、こんなに軽く、そして心地よくしてくれる言葉になるなんて、数年前の自分は考えもつかないんだろう
そう思いつつ、明依さんから貰ったビールを飲み干した
「兄ちゃん……明日父さんと母さんの所行くんでしょ?飲みすぎない方が……」
『らいじょぶらいじょぶ〜〜wまふゆはやさしぃなぁ』
もう大丈夫。苦しい事もあるけど大丈夫。
もう、誕生日も嫌じゃない。すごく幸せな、忘れちゃいけない大事な日だから