この日だけは休業日『明依さんお誕生日おめでとうございます!いつも弟の話聞いてくれてすっごく嬉しいです!素敵な一年にしてくださいね』
『明依さんオメデト〜〜(^ω^≡^ω^)また今度酒飲みに行くね〜』
『誕生日って聞いたんで、絵送ります。おめでとうございます』
今年の誕生日は今まで以上に賑やかだ。なぜか繋がった不思議なお友達からの言葉、プレゼント……常連の方々とはまた違う個性が面白い
誕生日を祝いたいってパーティも催してくれた。まぁ、それは明日なんだけど
「当日じゃなくていいんですか?」
主催してくれた著華ちゃんがそう言った。
「ごめんね、当日の予定はもう決まってるから」
「あ、そうなんですか……?お店の常連さんと過ごすとか?」
「違うわよ、誕生日だけはお店開けないの。」
私の店は基本見しった顔しか来ない。毎日誰かがいらっしゃる訳でも無いけど、6月16日…誕生日だけはお店を開けない。OZU WITCH唯一の休業日だ
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「……今年も、誕生日を迎えました」
「私をいつも支えてくれて、ありがとう」
「誉さん」
結婚して最初の誕生日。私の旦那さんはカウンターに立って料理を作ってくれた
「今日だけは、明依さんがお客さんです」
とっても不思議な気分だった。でも、すごく嬉しかった
毎年の誕生日だけお客さんが座る椅子に私が座って、誉さんとお酒を飲む
すごく、すごく幸せだった
……結婚生活、5年も続かなかったけど
私、どれだけ悲しんだだろうか
どれだけ、誉さんが大好きだったんだか
強く、強く依存している。そんな事わかっている
だけどそれで誰かに迷惑なんて掛けてないから私は構わない
「誉さんが出してくれたカプレーゼ、すごく美味しかった」
「そしたら言ったわよね、切って並べただけですよ〜って」
「でも、美味しかったの。今まで食べた何よりも」
ワインを開けて、カプレーゼを並べる。作ったのはもちろん私だけどね
浸っていたい。彼が居た時の思い出に
2つのグラスにワインを注いで、並べる
そしてカウンターから出て椅子に座る
私の前には、2つのワイングラスと、笑顔を見せてくれる写真の中の誉さん
「……今年もありがとう。誉さん」
私は今年も、居ない貴方のお客さんになる