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    Szme_me

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    クリスマスもお正月も欲張りセットした結果、遠い日に過ぎ去った現パロいそえみ

    明けましておめでとうないそえみ
    それぞれ飲み会。終電逃したいそが電話しながら先生の家へ。
    先生も迎えに駅へ。
    二人が途中で出会うとか、かわいい。



    がやがやと、やけに騒がしい。
    電車を迎えるという大事な仕事。それを今年は全て果たした駅の横を早足で通りすぎながら、イソップ・カールはマフラーを口元に引き上げた。
    普段なら閑散としているこの時間。それなのに今日はまだたくさんの人でごった返している。終電を降りたばかりの若い女性は家族の迎えに手を振り、年の瀬まで働いていたらしいサラリーマンは安心したのかほっとため息をついていた。職場で年を越さずに済んで良かった、というところだろうか。
    そんな彼らから少し視線をずらせば、駅前のコンビニで赤ら顔の集団がハッピーニューイヤーと叫んでいた。肩を組んで道幅を広く陣取り、通行人の迷惑と引き換えに実に楽しそうだ。
    (まったく、ハッピーニューイヤーなんて…)
    除夜の鐘が響くまでまだ二時間も残しているというのに随分と気が早い。
    左手首を見れば、真新しい時計が正確に時を刻んでいる。黒い文字盤のそれは、贈られていくらか日も過ぎたが未だ見慣れず、くすぐったい。そして同時に、大きく傷をつけてしまいやしないか、壊してしまわないか、いたく緊張もしていた。
    あまり詳しくない自分でも聞いたことのある有名な時計のメーカー。当然値も張るし、大学生の身分にはまだ分不相応だ。
    (だって似合うと思ったんだもの、なんて言われたけれど)
    浮いてやいないだろうか。そう不安になって、見られているわけでもないのに周りから隠すように袖を伸ばす。
    クリスマスのために僕が用意したプレゼントと比べても、この時計は月とすっぽんだったろう。もちろん、時計が月、僕のプレゼントがすっぽんだ。そんなにちゃちなものを選んだつもりもないが、社会人からすれば大した差ではないはず。そも、彼女が自分で買うアクセサリーの方が余程高価なものも多いはずだ。
    それなのに心底嬉しそうに、照れたようにはにかみながら「毎日つけるわね」と喜んでくれた笑顔は本当に…本当に、愛しくて…思い出しても胸が締め付けられてたまらなくって…。ああ、だめだ、本当に好きだ……。
    (…いやいやいやいや。そうじゃない、そうじゃない)
    彼女の喜ぶ様を思い出して、思わずにへらと笑ってしまった。ついつい歩むスピードも緩んでしまい、頭を振って再び気をしっかり持つ。
    そう、先生と僕じゃ本来、月とすっぽんなんだ。年齢の問題じゃあない。そんなのは些細なこと。
    僕は先生と出会ったあの春の日から、…いや、あそこで出会う前からずっとずっとすきだ。それに先生も僕を変わらず想ってくれていることを知っているから、たった十年ぽっちの差なんてちっとも大したことじゃない。
    じゃあ一体なにがすっぽんかと言えば。
    (仕事、なあ……)
    僕はしがない大学生。ただし、こんなのはただの身分であって本当なら職とすら呼べない。稼げるお金だって掛け持ちしていてもバイトが頼りの微々たるもの。
    一方で先生は、医師だ。個人で開業もしていて、スタッフさんにも患者さんにも、多くの人に慕われている美人のダイアー女医。先生の繋がりで知り合ったピアソンさんから聞いた話では地域でも有名らしい。(外見はいいもんなあ、なんて言っていたからその部分に関してはぽこぽこ叩いて子供のように抗議してしまった)(先生は外見も中身も素敵なのに! 異論は一切認めないぞ!)
    そんな素敵な先生と再び巡り会った春の日から、隣を許し合うようになってもう八ヶ月ほど経つ。けれどさりげなくリードされるのはいつだって僕の方。先生はまだまだ子供の僕に付き合ってくれている。
    例え夜景の見える洒落たレストランに行けなくても、顔が隠れるぐらいの大きな花束を抱えることができなくとも。
    イソップくんとふたりでいることがなによりよ、と事あるごとに微笑んでくれる。
    …だからこそ、時計だなんて高価なものを貰うわけにはいかなかった。これ以上ないほど彼女にはたくさん気持ちをもらっているというのに、金銭面でも多く貰ってしまうなんて。僕ばかりが良い想いをしてしまう。そんなのは不公平だろう。
    だから、当然断った。当たり前だ。僕に渡せるのは彼女を想って選んだけどちゃちなネックレス。彼女が用意したのは僕には似合わないような素敵な時計。
    しかしにっこりと、差し出したまま退くことを知らない手は受けとる以外の選択肢をはなから奪っていた。
    「先生、意外と譲らないからなぁ……」
    そして脳裏にまざまざ蘇るのは今にも土下座せんばかりの自分の姿。
    ─どうしても受け取らざるを得ないのならばせめて箱のまま、飾らせてください! お願いですから!
    半泣きの、情けない声で叫びながら懇願した二十五日の朝を僕はきっと忘れないだろう。
    しかし今、確かにこの腕に黒い時計は鎮座している。
    情けなく頼み込んだというのに一体なぜか。それは。
    (…お揃いなんて聞かされたら、着けない理由がなくなるじゃないか…!)
    それこそ、つい先日のクリスマスのことだ。時計問答を繰り広げる前夜、彼女にしては珍しく、黒い文字盤のシックな時計をしているな、と思った。


    ~略~


    時刻はまだ二十二時。除夜の鐘が響くまでまだ二時間も残している。
    (僕は今からやっと先生と過ごせるというのに! 年越し気分で勝手に盛り上がらないでほしいや)
    しかしながら、そんなことは到底言えたもんじゃあない。なにより、下手に目をつけられて話しかけられでもしたら面倒だ。ただでさえ遅い訪問になってしまっているのに余計に時間を食ってしまう。
    (コンビニ、寄ろうと思っていたけどここはパスだな)
    は、と小さく溜め息をマフラーに吐き出す。決して視線を合わせないように、と酒臭い集団の中、早足をさらに速めていった。
    なにせ、あと一駅分は歩かなければならないのだ。面倒事を避けるにも、時間を節約するにも、早足であることに越したことはない。
    人の波を抜けたあとも、イソップは速度を緩めることなく歩み続ける。
    「…、ん?」
    ふと、コートが震えた気がした。歩みながら上からそっと手のひらで押さえてみれば短い振動が続いている。…着信があったらすぐに分かるように、と彼女にだけ個別で設定したものだ。
    かじかむ手で取り落としそうになりながら、慌てて画面を操作する。通話に応答する方へ指を動かせば、嬉しそうな柔らかい声が耳に広がった。
    「─あ、イソップくん?」
    今、どの辺りかしら。




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    Szme_me

    MAIKING先生の誕生日話だったやつ今夜、訪ねてもいいですか。

    エミリーがそう尋ねられたのは試合の真っ最中だった。
    「訪ねて…って…」
    すぐ隣にいるのは最後の一台を淡々と解読している納棺師。言葉を発した彼だ。
    空軍が上手く引き付けているおかげで通電までは難なく運べそうだった。もうひとりのメンバーである探鉱者には先に反対側のゲートで待機してもらっている。
    だから、たまたま近場に居たふたりで最後を回していたところだったのだけれど。
    「え、っと……」
    真意を測りかねて、返答に詰まってしまった。しかし、がたんばたんと暗号機を揺らしている姿は先ほどの言葉などまるでなかったかのよう。視線のひとつもくれやしない。真剣な眼差しで黙々と取り組んでいる。
    (もしかして空耳だったのかしら?)
    変に期待しちゃって恥ずかしい、と少し赤くなった顔を下げ、エミリーは口を結ぶ。
    (試合中なのになんてこと。集中しなきゃ!)
    最後の一台というのはとても緊張する。それまでが例えどんなに順調でも、一歩間違えれば形勢は一気に傾いてしまう。…マーサが頑張ってくれている分も、誤るわけにはいかない。
    「イソップくん、最後は」
    私がするからあなたもゲートへ、など皆まで 3357

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