「だから言ったでしょ、マッシュくんは壁ドンなんてしちゃダメだって」
そう言いながら砕け散ったドアの破片を集めていると、マッシュくんが申し訳なさそうに眉根を下げた。
「フィンくんを逃したくないって気持ちが抑えきれなくて……」
「そんなことしなくても逃げないってば。……っていうか、キスしたいなら言ってくれれば僕からするし」
口づけひとつのために部屋を破壊されたらたまったものじゃない。そんな思いからそう告げると、マッシュくんは露骨にしゅんとする。
「僕だって自分からフィンくんにキスしたい……」
「そう言われてもなぁ……」
興奮すると力加減ができなくなる、という特異体質の持ち主であるマッシュくんは、今までに様々なものを壊してきた。シャープペンやリモコンといった小さなものから、壁やドア、床といった壊したらシャレにならないものまで。
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