まどめ140字小説、パネルトラップの部①バルバロス×夕暮れ
今日はやたら赤ぇな、とバルバロスは夕陽に焼かれる空を見上げた。
空のみならず、建物も、木々も、人々も、世界は一様に赤く染まっている。
…自分も今は、あいつと同じ緋髪緋眼に見えるのだろうか。
なんて意味もなく考えながら。
真っ赤な世界の中、夕陽より輝く緋色に手を振った。
②ザガン×思い出
「ザガン様、こちらの跡は…」
「ああ、それは昔バルバロスを吹き飛ばした時に…」
「そっちもバルバロスを…」
「そこはあの馬鹿が…」
ネフィが可愛らしくクスリと笑う。
「お二人はとても仲がいいのですね。」
「本当にやめてくれ。」
早急に全てネフィとの思い出で塗り替えねばならない。
③レイチェル×夏祭り
あぁ、主よ!なんて尊いのでしょう!
普段と違う浴衣姿にお互いドキドキしながらも、誤魔化すように普段通りを装うその姿…わたあめよりも甘いです〜!!
そこ!そこです!!人混みで逸れないよう手を繋ぐのです!
はぁ…まだ最大のイベント、花火まで残っているなんて…
夏祭り、最高です〜!!
④ビフロンス×贈り物
うーん、どの服がいいかなぁ。
こっちは色の主張が強すぎるし、あっちはデザインが普通すぎる。
綺麗な銀髪を活かしたモノトーンにして、せっかくスタイルも良いんだしもっと露出度も高くしたいな。
あはは!誰かに服を選ぶ、なんて初めてだから新鮮だ。
僕の可愛いお人形。
どれが一番似合うかな?
⑤リチャード×デート
ネフテロスは素直で真面目で勤勉だ。
それは恋愛においても例外ではない。
無垢な瞳で「行ってみたいわ」と言われれば、男として応えないわけにはいかない。
そして、エスコートはいついかなる時でもスマートに。
そうしてリチャードは、お化け屋敷のパンフレットをめくった。
⑥ウェパル×ランチ
郊外にひっそりと店を構える老舗のカフェ。
静かな時間の流れるこのカフェをウェパルは一等気に入っていた。
暖かなテラス席で、一人絶品のパスタに舌鼓を打つ。
過酷な日々の中の束の間の休息…
「おいウェパル、ちょっと顔貸せ。」
突如影から聞こえた声に、ティーカップの取っ手が悲鳴を上げた。
⑦シャスティル×頭を撫でる
たまった書類仕事に追われ、気づいたら朝になっていた。徹夜なんて久しぶりだ。
シャスティルは眠い目を擦りながら仮眠室で顔を洗う。
扉を開けると、応接ソファに座るバルバロスの後頭部が見える。
あぁ、心配させてしまっただろうか。
すまない。
無意識のうちに、その手は彼の頭へと伸びていた。
感謝を伝えるように撫でると、ボサボサの髪は意外にもふわふわとしていることに気づく。
つい楽しくなって、わしゃわしゃとしばらく撫で回した。
そして、気づく。
彼が首まで真っ赤にしてプルプルと震えていることに。
?どうしたんだバルバロス。
何か具合でも…
あれ?
早朝の教会に悲鳴が響いた。
⑧アスモデウス×サプライズ
「サプライズ、ですかぁ?」
立ち寄った雑貨屋でアスモデウスは聞き返した。
ほら、と店主が指したものは一見すると普通のパンだが、実は中に小物をしまえる小さなケース。
中に贈り物を入れて渡し、驚かせるのが最近の流行りらしい。
そういえば可愛い弟子の誕生日がもうすぐだ。
頑張っている弟子に、たまにはご褒美でもあげますか。
アスモデウスはケースを一つ手に取った。
3日後。
魔獣の群れの中から這這の体で帰った弟子に、アスモデウスはそれを手渡す。
…中にはたっぷりのゾーンイーターの目玉(※高級魔術触媒)を入れて。
弟子は激怒した。
⑨シュルヴェステル×願い事
俺はここで死ぬのだろうか。
冷たい雨に打たれ、男は一人空を見上げる。
俺が死んだら、家族はどうなる。
傾いた家は、家を守ろうと頑張る母は、身体の弱い妹は…
…あぁ、誰か、誰でもいい。
俺の代わりに家族を…妹を、助けて、くれ…
その最期の願いに応えるかのように、聖剣は彼の妹を選んだ。