UNTITLEDふわふわ、ふわふわ。
目の前に浮かぶ大きなシャボン玉。それは、映画館のスクリーンのように知らない物語を映して僕に見せてくる。
光の加減で時折見せるスペクタクルがスライドショーのように映像を切り替える。
ゆっくりと、まるで思い出させるかのように。
知らない、本当に知らないんだ。
だけど、どうして、ひどく心が痛い?
1人の見知った姿の少年が赤い液体の中で倒れていた。
美しく輝いていた金色の髪が赤く、紅く染まる。
その少年に覆いかぶさって優しく抱きしめる紫の男。
音はない。しかし、この様子は泣いているのかもしれない。
大切な人を亡くしたのかも__
僕にも大切な人はいる。
もし、大切な人__彼が目の前で死んだら、なんて考えたくもないが、どうしてかシャボン玉に映るそのシーンは僕の心をギュッと握り潰す。
3541