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    nainaisokoniha

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    nainaisokoniha

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    フラバの二次です。
    捏造・設定大無視・作中レベルの絞首表現有り。
    第1回ワンドロワンライ企画への参加文章です。

    万に一つも 暗闇にいる。クリニックから帰った後、何をしたかはっきり覚えていない。ここはわが家なのか。自分はまだスーツを着ていて、何かが不安で、膝を立てて地べたに座っている。今日も疲れた。ここ最近は精神的に疲弊しきって、情緒が乱れているからだ。日常の中のほんの僅かな時間でも、先生が言っていたフラッシュバックが起きただけで、夜も眠れた気がしなくなる。心臓の位置が常に上にあがっているような不快感がずっと続いている。あいつが。そうだ、あの男が、俺の頭の中にこびりついているからこんな事に。対面したこともないあの男の歩幅が、足音が、息遣いが。

    乾いた、コロコロと何かが転がる音。今この瞬間明確に聞こえた、しかし自分の口からなのか脳内の音なのか分からない飴の音。聞きたくもない響きに両耳を塞ぐ。今自分の口は開いていて、不自然な息をしているから、自分の口からの音では無い。そんな分かりきったことは認識出来る。しかし、耳を塞いでなお脳内に響く飴の音が大きくなって、同時に鎖の音が聞こえて、何が起こっているか分からない。無力感が恐怖と共に体内を渦巻いて生きている心地がしない。
    早く終われ。もう、気絶してしまいたい。今すぐこの音から逃れたい。もうたくさんだ。限界だ。一刻も早く、この幻聴から解放されたい。
    耳が、足音を知覚した。ブーツの音。いつもディスクで聞いていた、あの歩幅のリズムだ。犯行前の、ややゆったりと地面を踏みしめる足音。しかし脳内で鳴り響いているのでは無い。
    目の前の空間へ目線を上げる。あの足先が、ふらりと目の前に現れた。ありえなかった。今俺の目の前なんかにいるわけが無い。それなのに、靴が一歩、また一歩俺に向かって進んでくる。
    顔をおずおずと起こす。チェーンが光っている。黄色のラインが入った袖が見える。飴をくわえて、目の前に立っている。フードを被った男の顔がこちらを見下ろしている。
    「あ、」
    引きつった喉からか細い音が出た。咄嗟に耳を塞いでいた両手を地面に置き、後退った。しかしそれ以上全身を動かすことが出来ない。立ち上がって逃げることも、大声で叫ぶことも叶わない。その原因は、目の前に奴がいる今の状況以外にない。四肢の感覚全てを制御出来ずに、関節は小さく震えるだけだった。勝手に腹が痙攣したように動いて、それに合わせて細かく呼吸が繰り返される。目の前の男はポケットに両手を入れ、ただ立っているだけだった。さっきまでの音は全て消えた。それなのに、次は頭が凍りついて仕方がない。靴裏を地面に滑らせて、力の限り後ろへと逃げる。なぜ男は黙って俺の目の前にいるのか。しかし何も考えられない。頭を小さく横に振る。
    俺は、ただお前がくれたお前の感覚を。
    男がまた一歩近づいた。そして俺の目の前で、ゆっくりとしゃがみ込んだ。目線の高さが少しだけ合う。男は口を一文字にした顔を変えずに、俺を眺め続けている。訳が分からなくて、脳が熱を失って、恐怖さえ感じ取れなくなった。俺はこれから何を。
    すると黒い手袋を付けた男の右手がこちらに向かって伸びてきた。あの何度も体験した光景が一瞬で脳裏に蘇って、息が止まる。予想通り、手の行方は首だった。しかし、男は人差し指だけを伸ばし、喉ではなくネクタイの結び目に置き、そのまま重力に従う様に腕を下げ地面に向かって引いた。まるで気だるげに、ネクタイを解き始める。そしてシャツの襟から全てのネクタイが引き抜かれた。それでも、詰まった呼吸が解放されることは無い。自分の乱れた息だけが響いている。すると男はネクタイの端を持ち、俺の頭上で腕を回し、首に巻き付け始めた。一周、二周させて手を離し、両端が俺の体に垂れ下がる。そして膝を伸ばし立ち上がった。
    「え、あ」
    さっきのようにまた見下ろされ、ただ目線を向けられている。意味がわからなかった。しかし一つの確信のようなものが浮かび、全身に僅かずつ感覚が戻ってきた。
    この男がこんな突拍子もない、意味の無いことを、しかも自分に対してするわけがない。これは恐らく夢だ。
    すると突然胸に強い衝撃を受けた。そして後頭部が何かにぶつかる。
    目の前の男は、何故か片足を上げて俺の上体を蹴り、地面に叩きつけていた。頭が疑問符で埋まる。男は倒れた俺の顔の傍にまで歩を進め、地面にあるネクタイの片端を右足で踏みつけた。恐ろしさの根源である男の顔を見てみても、何を思っているのかが分からない。男は左手を伸ばし腰を屈め、ネクタイのもう片端を持ち上げた。力を込めている。そして握られたネクタイは思い切り上へと引き上げられた。
    「、!?ごっ……、あぁっ……!」
    喉が潰れた。もう何が起きているのかが理解できない。今俺は、この殺人鬼に殺されているのか。
    ネクタイを指で掻く。どれだけやっても少しも首から剥がれない。男に何かを乞おうと、震える眼球を男の顔に向ける。今までと眉の角度一つも変わっていなかった。何を考えているのか、到底分からない。喉の奥から、水っぽい音が混じった空気が口へと漏れ出る。このままでは死ぬ。
    しかしこの男が、俺なんかを殺そうとするはずがない。それは俺がよく理解している。男が殺すのは、必ず若い女だ。そして寡黙そうでは無い、やや高飛車めいているような、そんな女。だからこれは夢だ。
    「、あっ……!ぐ…ぉ、……っ!」
    こんな、殺される前に一つも体を動かせないような人間には、殺意を向けない。俺のような、恐怖に全身を支配されているだけの男には決して。だからこれは、確実に夢だ。
    「あ、っ!……、はっあ、……、」
    俺みたいな人間は絶対に殺さない。だからこんなにも、俺には触れる気もなく、いつもとは異なるやり方で、今のこれを殺しとも思っていないような顔をしながら。それにこれは夢だ。夢だから、早く覚めればいい。
    殺される側のディスクを体験したことがある訳では無いのに、なぜこんなに苦しい感覚が鮮明にあるのか。殺される彼女達の歪む顔を何度も何度も再生して体験して見てきた。見ただけだ。見て満足しただけで、殺される感覚なんて蘇らないはずだ。苦しい。もう意識が遠くにある。いつも彼女達は、俺が首を絞めてから1分程で。今はどのくらいの時間が経っているのか。伸ばしきって力がこもった足先がつる。手がもうネクタイを掴めない。顔面の体温と血が一気に抜けて、目が乾く。汗がスーツと皮膚の間をはっきりと伝う。自分の呻き声さえ聞こえなくなる。まぶたが痙攣して、まつ毛にわずかな光が何度も遮断され目の前の光景がチカチカと映る。
    早く夢が終われという気持ちと死にたくないという気持ちがない混ぜになって、どちらがどちらなのかが分からない。解放されたいのか何なのか。自分が今欲していることさえ定かにできない。脳内が白い何かに侵食されていく。ネクタイに触れる首の脈が鈍くなる。死にたくない。俺は、あんな風にはまだ。
    「お前を見ている」
    低く体温のない声が脳内に入り込んで、一瞬で消える。


    「ぐ、ぁっ、……っ!」
    目が開いた。息を飲み込んで、自分が喉に両手を置いていることに気がついた。せき止められていた血が空になった頭に逆流するようにして戻る。俺は寝間着を着て、電気の消えたリビングのソファーで片膝を立て、仰向けになっていた。いつも見ている部屋がぼやけているのは、目がくらんでいるからか。上体を起こし手のひらを見る。自分がしていたことが分からない。それに、今さっきのは、聞いた事のないあの男の声か。自分の声のようにも聞こえた。脳内で何かが補正されたような、なにとも判別出来ないようなただ不気味な声だった。しかしただの幻聴でしかない。息を吸っていると、僅かに頭の中に思考が戻ってくる。体の反応は未だに追いつかず、汗にまみれている。喉を動かして唾液を飲み込めば、自分で絞めていた喉の皮膚が伸びた気がした。

    「パパ?」
    反射的に振り返る。ドアの近くに息子が立っていた。
    「今、なんか声が聞こえて、パパのなんか」
    「いい、いい、言わなくていい……」
    固まった喉のせいで言葉が震え、上手く発せなかった。
    「力、起こして悪かった。もう寝るんだ。早く部屋に戻れ」
    眠たそうに分かったと言い、瞼を掻きながら子ども部屋に戻っていく。
    両手が震える。息が元に戻らない。なぜこんな事が起きたのか理解ができない。
    早く先生のところに行きたい、行かなければ。こんなにも楽になりたい。この脳から一刻も早く、今まで経験してきた感覚を取り除きたい。それに、あの男が、きっといつか自分のことを。
    家の全ての鍵に駆け寄り、何度も確認して閉めた。寝ている妻のいる寝室に行く気にはなれない。もう自分のものでさえなくなったこの手が、また無意識に動くことが恐ろしい。両手が離れないように全ての指を交差させ祈るように握りこむ。指の付け根が軋む。今日はもう眠ることが出来ない。
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    nainaisokoniha

    DONE妄想してたら出来た学パロの室志(カプ描写なし)
    志摩野鷹也ハピバの室井の話。
    学パロだから2人が少し青くさい。
    学パロハピバ室と志 誰かがプロフィール帳に書き留めていたものから始まったようだった。
     自分の手帳の日付にも彼の行動予定などと同じように記しているが、今日は志摩野さんの誕生日だった。朝から色々な生徒が彼の元に来て何かしらの贈り物を手渡している。昼食時、横に座っていた男子生徒も、「おめでと〜」とコンビニで買ったような菓子を軽く渡していた。彼はどれもにこやかに受け取り、礼を言って自分の鞄にしまっている。
     放課後は学校に用はなく、そのまま下校する予定だった。そんな中でも、志摩野さんは廊下を歩いていると何人かの生徒に呼びかけられ、言葉と共に贈り物を渡されていた。
     次々と手渡される光景に、ずっと胸の内がわずかに落ち着かない。それは焦りに似た何かだという自覚がある。自分以外の誰かは、ただひたすらに祝福の言葉をかけたり贈り物をしたりしている。そんな中で自分だけが何もしていないような感覚が、無意味に思考を包んだ。しかし、自分という立場の人間が何かを贈るなど考えもつかない。仕えている側である人間が、何かを渡そうという気にはならない。この日が来る前からずっと、そんなつもりもなかった。だから色々な生徒が彼に祝福を手渡すのを後ろからただ見ているだけでいる。
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