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    nainaisokoniha

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    nainaisokoniha

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    モブ鈴(光明) ワンドロライ企画の文です!(時間超過)
    モブ視点
    捏造あり。原作レベルの下ネタ(性的な描写は無いけど何でも良かったら読んでください)
    差別にあたる表現を作中同様使用。

    「鈴木支配人は男が好きだ」

    今、こういう話のネタが、俺の周りの連中内でわさわさと巡っている。この業界では珍しくもない話であるはずだった。そういう通説は、品性の無い世間話やシモの話と共に流れて、業界で生きてる奴の頭の隅に残っているようなものだっだ。しかし俺自身、実際には、この世界に入ってそういうものを直接見聞きしたことは無かった。他の奴らもそうなんだろうと、ネチネチとした話の盛り上がり具合で何となく伝わってくる。
    当然のことだが、今会話をしている全員が、支配人と親しくはなくとも挨拶くらいはしている連中だ。支配人の方も、こっちを把握している。
    確かなことは分からないと、話の発端だった人間が言う。しかしそれを機に各々が思い出したようにして背中を曲げ話をしだした。

    「通りの近くにホテルあるやん。俺らがあんまり使わん様なとこ。この前あそこから、なんや偉そうで割腹のいいスーツのおっちゃんと支配人2人で出てきてたっての聞いたで、夜中に」

    「ゲイ向けのビデオに出とるとか出てへんとかの話も」

    1番初めに挙がった話題の真偽を裏付けるような話が、次々と出てくる。それを、また会話内で自分達のテンションの昂りに合わせ転がしていく。

    「もしかしたら枕営業ってやつちゃうん、そのおっさんとも」
    「ホモ言うよりか、めっちゃ体張ってるだけの可能性もあるなあ。金のために。支配人ってのはそないこともするんかいな」

    全員が、冷笑にも似た声色で話を進めている。

    「でも稽古場で、誰もおらん時、芸人のタオル片っ端から匂うてたの見たやつもおるらしいで」
    「なんやねんそれ」
    「ならちゃうか」
    「単純にホモやん」

    強度があるようなないような、そんな会話が繰り広げられた。そしてまたこのネタは尾ひれがついて広まるのだろう。でも自分にとってはただの面白い部類の話題でしか無い。その程度だった。

    ある日の夕方頃、ボイラー室に用ができ劇場に戻った。夏場のボイラー室では、少し動いただけで汗が出てくる。
    観客も芸人も誰もいない空間は、異様な静けさを感じた。
    するとドアが開きバタバタと前後する音がした。

    「何してるの」

    支配人の声だった。振り返り体を向け、お疲れ様さまですと挨拶をする。

    「台本の紙忘れたんで」

    会釈を終え、積み上げられた段ボールの中やソファーの下を漁り直す。おっかしいなあと声に出しながら探し物を続けていると、いつものようにゆっくりと靴音を鳴らしながら、支配人はボイラー室内を歩き出した。ステージの方に用があったのか、階段を上り地上へと消えていく。また誰もいなくなった空間で、ふと支配人の噂を思い出した。確かに、そういうけがある身なりをしているなと改めて思った。そんなことを頭の隅に起きながら探し物を続けていると、階段から降りてくる靴音がした。そのまま横目でチラチラと見ていると、ボイラー入口付近の短い階段に腰掛け、携帯電話を操作し始めていた。支配人はこちらを気にせず、ボイラー室には自分が探し物をする物音だけが響いている。
    しばらくして、携帯電話を折りたたんだ支配人は、腕時計見たり、胸元から取り出したハンカチで額の汗を拭いてたり顔をあおいだりしていた。

    「ああ、見つけましたわ」

    ソファーの隙間でに紛れていた探し物を、その場にいる支配人にひらひらと見せ、とりあえず笑っておく。

    「それは良かった。また相方さんに怒られるとこだったねえ」

    ほんまですわと返すと、支配人は階段から立ち上がり、水道の方へと歩いていった。そしてそのまま手を洗っている。水がちょびちょびと細く落ちる音に被せ、ふと雑談ついでに、単純に自分が気になっていた話題を話しかける。

    「鈴木さん」
    「ん?」
    「噂になってますよ。鈴木さんのことが」

    わずかに声が浮ついた。

    「どんな?」
    「あぁ、鈴木支配人が、男好きかもしれへんってやつです」

    手を洗い終えたのか、水道から離れ、「ふーん」という息を吐きながら扉近くの台に座り、また額をハンカチで拭き始めた。動揺があるのか、ただこのボイラー室が暑いのか、判別がつかない。

    「別にいいけどね」
    「良いんですか」

    予想以上に即答された端的な答えに、正直面白さは感じられなかった。

    「いやだって、体張ってゲイのビデオ出とるとか、偉い感じのおっちゃんと枕営業なのか知らんけどホテルから一緒に出てきはったとか、芸人のタオル片っ端から嗅ぎ回っとるとか。そういうのっすよ。やばいんとちゃいますか」
    「何か問題ある?」
    「い、いや、別に、俺にはないですけど」

    こんなにもあっさりと話題を流されてしまった。拍子抜けにも近かった。何かまた、仲間内で話すようなことを支配人の口から聞けると思っていた自分に気がつく。
    しかし、その話題はそのまま終わり、本人の口から出たのは真偽が定かになる訳でもない、どうでも良さげな言葉だった。そして、本当に男が好きなのか、それが余計に気になり始める。

    「まあ、鈴木さんがそれでかまへんなら……」

    こんな、人生の汚点とも言えるような噂を抱えこの人は過ごすのかと思い、徐々におかしくなってきた。ただの恥だ、こんなものは。いつも鼻につくような格好をして、まだ俺らみたいな芸人らとそう歳も変わらない中で支配人をしていて。それらの終着点は、下劣で気色の悪いものなのか。
    あっさりと返された答えも相まって、若干のむかつきが生まれていた。しかしそれが怒りになるほどでもなく、むしろ嘲笑うような感情でまた会話を続けた。それに、本人の口から真偽を確かめたいという気持ちになる。

    「いやだって、鈴木さんが困るでしょ。男好きかもしれんて、こんな話広められたら」

    支配人の顔を見つめ直し、確かめるようにしてゆっくりと口を開く。

    「本当だとしても」

    自分の言葉が、脳内とボイラー室にただ響いた。それを聞き、支配人は顔をあおいでいたハンカチを、悠々とジャケットの胸元にしまった。そして座っていた台から立ち上がり、ソファーの前に立っている自分の方に歩を進め向かってくる。目の前にまで来ても足を止めない支配人に後ずさった。台本が手から落ちる。目の前の体を直接抑え制止させるという考えにならず、ただ空気を両手で掴み転倒しそうな体を立て直そうとした。

    「わっ、ちょっちょっちょっと」

    振り回した自分の腕が当たり、ソファーの横に立てかけてあったモップやほうきが地面に倒れ、けたたましい音が響いた。そしてその流れで、両足が広がったままソファーに尻もちをつき倒れた。簡易なソファーはガタガタと音を立てきしむ。そして、支配人の右手が俺の体に伸びている。声が出そうになった。しかし頭の中が一瞬混乱で眩み、状況を確認していると、いつの間にか股間に手のひらを置かれていた。心臓が引きつって跳ね、ようやく「ひっ」と声が出る。思考が固まって、支配人もそのままの状態で何一つも動かない。ただ、上目で、今まで見たことの無い、えげつないとしか形容できない目線でこっちを見てくる。白目が大きく、下まぶたのふちが濃く見える。
    今までズボン越しにでも男に股間を触られた事なんて、というより、誰かにこんなに恐ろしい触れられ方をされたことが無かった。

    「あっ、あっ、……」

    股間に置かれた手をどける方法を模索しても、案が一つも浮かび上がらない。すると支配人が口を開いた。

    「何が気になるの」
    「へっ!?」

    こちらに喋りかけながらも、右手が動く気配は無い。

    「分かったでしょ。で、俺がこうだと何が気になるの」

    ずっと目線が離れない。

    「言ってみなよ」

    口の端で喋るような、平らな声のトーンで問いただされ、無条件に焦りが生まれる。

    「え、いやあ。べ、別に、いや、嫌とかそういう訳ではなくって〜……」

    とりあえず自分の頭からでてきたのは、これだけの言葉だった。
    カスのような受け答えを見たせいか、ため息をつくように、支配人は俺の体から手を離し踵を返した。
    支配人が部屋の遠くに行き、俺もやっと息ができたような気がした。一瞬で疲れ、ソファーの上でうなだれる。

    「ほんまやったんやあの話……」

    今この瞬間、世界で自分一人だけが理解したような妙な納得感が湧き、そう呟かずにはいられなかった。

    「なんの事」
    「……ですから、あの噂のことですって……」

    そして疑問が浮かび、頭を上げ支配人を見やり質問を投げかけた。

    「もしかして、ここで色んな芸人食ってはるんですか!?」
    「そうだったらどうするの」

    そう言いまた足をこちらに向け僅かに近寄られる。焦って拒絶のポーズが出る。
    支配人は鼻で笑うことも無く、また踵を返し、そのまま言葉を続けた。

    「でもその話、君があちこちで聞いただけの噂でしょ」
    「え、あ!?嘘なんですか!?」

    ソファーから立ち上がりそうになった。
    いきなり大声を出したこちらを気にせず、腕を組みドア近くの段差の壁にもたれ掛かり話している。

    「別にそう言うわけでもないけど」
    「は?」

    次々と出される支配人の言葉に、脳内が転がり続ける。

    「ビデオの話も、別に俺が出たことはないよ」

    あ、そうなんですかと、謎の安堵が口をつく。想像なんてしたくもないからだ。今は余計に。

    「金が必要だってすがってきた芸人さんにツテを教えて出させた。評判良かったよ」
    「終わってんな〜……」

    ため息が出た。俺らが汗水垂らしてネタを練ったり練習したりしている時、別の場所で汗水垂らして必死こいてそんなことを芸人がいるとは。まず、支配人もなぜそんなツテなんかを持っているのか。

    「あと、あのお偉いさんとは好きでセックスしてるだけだし」

    何も考えていない脳が、疑問符で埋まる。

    「向こうも奥さんいるから、余計楽しがってるよ。ああいう指の太いおっさんに、あの指で口とか色んなところに突っ込まれてたら、たまらないものがあるから」

    わざわざこちらに目線を寄越してくる。

    「ちょっと、勘弁してくださいよ……」

    気がつけば瞼を閉じ白目を剥いていた。本当に聞きたくなんてなかった。
    支配人の方は、お楽しみが終わったようにして言葉を続ける。

    「タオルの件も、ここ最近だとずっとボンちゃんのしか嗅いでないはずだし」

    なぜこれも本当なのか。

    「なんでボンちゃんさんなんですか」
    「好みだから」
    「あ、そうですか……」

    2名の姿が脳内で重なる。嫌だなと感じた。

    「なんで?」
    「いや……別に……」

    これ以上何も聞かされたく無かったが、何となくつっこみたい事が浮かんだ。

    「ホテルのおっさんは好みではないんですね」
    「まあね」
    「はあ~〜〜……」

    特に何の含みもなく即答され、こちらがいちいち感情を落とす羽目になる。もう色々と疲れた。
    話を適当に流すために、とりあえず笑っておくことしか出来ない。

    「俺にも、興味あったら俺とどう?とかって言うて、そういう世界にいざなわんとってくださいよ!?」
    「別に言わないよ」

    語尾に小さな笑いが付いたような声で返される。確実に馬鹿にされた。

    「ああでも」

    一言発し振り返る支配人に、心身ともに構える。

    「俺は別に何でも拒むわけじゃないから」
    「だからなんなんですかそれ〜!」

    あ~〜〜〜〜〜!!!!と大声を出してやりたくなった。もう自分事になるのは真っ平ごめんだ。もう、自分に関わらないでほしい。困惑や懇願が頭を駆け巡り、脳が疲弊している。
    一方支配人は、入口への階段を上り、段差の上から言葉をこぼした。

    「あんまり噂ばっか信じない方がいいよ」

    諭すように言われたが、それとこれとは話が別だという感情に襲われる。えげつないのはどっちだ。もう何も考えたくなかった。なぜ自分はこんなことを聞き出してしまったのか。今すぐ頭を掻き乱したい。
    支配人は、今の言葉を最後に、ドアを開け去っていった。廊下に革靴の音が遠ざかって行く。
    無性に、噂を知る前の自分に戻りたくてたまらなくなった。
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    nainaisokoniha

    DONE妄想してたら出来た学パロの室志(カプ描写なし)
    志摩野鷹也ハピバの室井の話。
    学パロだから2人が少し青くさい。
    学パロハピバ室と志 誰かがプロフィール帳に書き留めていたものから始まったようだった。
     自分の手帳の日付にも彼の行動予定などと同じように記しているが、今日は志摩野さんの誕生日だった。朝から色々な生徒が彼の元に来て何かしらの贈り物を手渡している。昼食時、横に座っていた男子生徒も、「おめでと〜」とコンビニで買ったような菓子を軽く渡していた。彼はどれもにこやかに受け取り、礼を言って自分の鞄にしまっている。
     放課後は学校に用はなく、そのまま下校する予定だった。そんな中でも、志摩野さんは廊下を歩いていると何人かの生徒に呼びかけられ、言葉と共に贈り物を渡されていた。
     次々と手渡される光景に、ずっと胸の内がわずかに落ち着かない。それは焦りに似た何かだという自覚がある。自分以外の誰かは、ただひたすらに祝福の言葉をかけたり贈り物をしたりしている。そんな中で自分だけが何もしていないような感覚が、無意味に思考を包んだ。しかし、自分という立場の人間が何かを贈るなど考えもつかない。仕えている側である人間が、何かを渡そうという気にはならない。この日が来る前からずっと、そんなつもりもなかった。だから色々な生徒が彼に祝福を手渡すのを後ろからただ見ているだけでいる。
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