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    nainaisokoniha

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    nainaisokoniha

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    モブ志要素、室と志
    ワンドロライお題お借りしたもの!
    ネタバレがある
    とても捏造

    濁り 車が行き交う街の中、後部座席のドアが軽く音を立て閉められた。ハンドルを握りながら視線を左の開けた窓へ移すと、車から降りた彼はドア越しにこちらを一瞥する。
    「2時間後、また来い」
    「了解です」
     別れの合図の代わりに、彼はスラックスのポケットに軽く両手を入れ、近頃仕立てたジャケットの裾を翻し車から離れていった。その背が向かって行ったのは、パーティー等の会場としても訪れたことのあるホテルのエントランスだ。彼が予定の詳細を伝えず、高さのある白い建物へと一人で入っていく様は、初めて見るものでは無かった。


     手帳を埋める手が止まった。
    「お会いするだけ、ということですか?会合などではなく」
     彼が初めて相手方との予定を自分に伝えた時、指定した時間も内容も曖昧なものだった。新規の取引先ではなかったが、懇意にし始めた会社の取締役との予定だった。思わず彼の言葉に聞き返してしまったのは、何の話をするために二名が対面するのか、詳細を推測できず焦りもあったからだった。長い間傍で業務を支えた身に、わずかな不甲斐なさが染みた。「まあ、会社の話もするだろ」、そう触れただけで、その後も数回同じようなことが繰り返された。曖昧な内容、不規則的な時間。しかし場所はいつも変わらず同じ、目の前のホテルだった。
     その中へと取り込まれて行った背中が消え、車を出しその場を後にする。

     野暮用を済ませたのち、2時間が経つ少し前にまた同じ場所に車を停めた。携帯に何も連絡は入っていないことを確認する。近辺に人や車が行き交う中で、フロントガラス越しに何度も見てきている光景をただ眺める。
     10分が経ち、30分が経った。今までも、聞かされた時間より遅れることはあった。だから、今彼が会っている相手との曖昧な予定が入る度に、その後のスケジュールに支障がないように調整してきた。
     腕時計の針は何事もなく進んでいく。
     ふと助手席側の窓へと目を傾けると、明るいベージュのスーツを着た中年の男が1人、エントランスから出て来るのが視界に映った。背景に紛れたその姿がやけに目に付いたのは、その男が、彼が会う予定の男だったからだ。そしてその姿は、もう会った後だ。しかし1人だった。彼の姿は、どこにも確認できない。また車内でただ待つ。連絡もない彼のことを考えながら、相手方の男が近くに止まった車に乗り込み去っていく様子を見ていた。
     しばらくして、彼はエントランスに入って行った時と同じ様に、車へと向かってきた。予定が遅れたことに対し何の問題もないような、特段変わったところのないいつもの表情だった。しかし自分は、それが気に食わなかった。彼に対してなのか、彼に構わずホテルを後にし自分は早々と去っていった相手方に対してなのか、分からなかった。
     恐らく彼と男は、体を重ねていた。今までもそうだ。そう察せざるを得ない。彼も何かを必死に隠そうとはしていなかった。特別気を揉む案件でもないかのように、自分には何も、説明も、改まって言うこともしていない。会社のある部門の経営が傾き、それを完全な回復に近づけたのは相手方との取引があったからだった。無理をしないとでも蘇生出来ないものが増えていく中、まだ潰れる訳にはいかずどんな手段を用いてもひびを埋めてきた。そんな状態は、最近から始まったことでは無い。時には犯罪を犯して支障となる相手を取り払うことなど、実行可能なことは全てやってのけてきた。それを出来うる限り支えた。彼の望みが定められているなら、それにただ従い彼に無駄なことをさせない為に動くのが自分だった。だから何に対しても、自分は何も聞かず、何の反応も示さなかった。第一、彼を心配などする立場に自分は無い。社長秘書として傍に居させてもらうだけの人間だ。しかし今日は明らかに、ふつふつとした何かが体の芯の底に湧いていた。彼と男が共にエントランスから出てくる姿を望んだ訳では無いが、彼の扱いへの粗末さを身勝手に感じ、気がつけば奥歯を噛み締めていた。頬の筋が熱くなった感覚がある。完璧に自分よがりの感情だった。
     車に近づいた彼はドアを開け後部座席に座り、いつものように足を組み腰掛けた。気のせいか、普段より香水のにおいが薄く、代わりに石鹸のにおいが香った。
    「すまない、遅くなったな」
     普段通りの笑みを浮かべ、何事もなく謝る。
    「いえ。問題ありません。会社に戻ります」
    「ああ」
     平常を装い、ハンドルを握る手が力んだ。しかし彼は、そんな自分の心境にも何かしら気づいているのだろう。バックミラーを見るのがはばかられた。こちらに軽く細めた目を向けているかもしれなかったからだった。それさえ杞憂なのだろうと感じる。
     想像もしたくはなかった。彼があの男に、利益だけで体を重ねられていることを。そしてそれが終わり、シャワーを浴びてこの車に戻ってきたことも。
     何も考えず、車を動かした。
     思えばあの時からだった。
     あの男と初めて対面したのも、同じホテルでの社交の場だった。グラスを持った彼にグラスを持った男が近づき、軽く体に手を回していた。その様子を何も思わず、壁を背に眺め過ごしていた。そして夜も更け、帰宅の命を出され普段と変わらず一足先に帰ろうとした。その後ろで、男は白い歯を見せていた。
     その初対面後、男は会社に訪れることもあった。いつの日だったか、自分が社長室のドアを開けると、社長のデスクに腰掛けた彼へと異様に近づき何かを話していたこともあった。男はこちらを気にすることなく、彼だけが視線を一瞬向け、また男に戻していた。
     彼に色を向ける取引先の相手は今までもいたことがある。それほど彼の容姿は常に煌びやかさを保っていて、そして体温が通っていないような淡白さを感じる肌と表情が、汚れを感じさせないものであることも、理解している。彼を手におさめたいと望む者の心情は、彼を己で染めたいというものでもあるのだろうと感じる。そして、からのような体を熱くさせ、乱したいのだろう。そういう、思考もしたくない事が容易に想像できてしまった。彼が放つものは、能力の他に使える彼自身の手段だった。使える時には細めた目を向け、深く微笑みかける。そんな場面も何度か見たことがある。それを使ったことに対し、自分は何も感じなかった。
     だからこそ、今なぜこんなにも自分が心を落ち着かせられないのか、自分自身納得がなかった。感じなくてもいい感情のはずだ。
     しかし何故か今になって、以前会社の用で対面した際に、男が自分に向かって話した言葉が脳裏をよぎった。
    「妹さんのためなんだね」
     なんの事か分からなかった。会話の流れでも、男が秘書である自分に投げかけた話だとしても、内容が掴めなかった。しかし男はそんな自分に対し不満がる様子もなく、他の人間と話をしている彼を見ていた。
    「志摩野くん、本当に頑張って会社動かしてるな。支えたい気持ちも分かるよ」
     粘着のある言葉に、軽く返事を返した。そして、妹のためという男の言葉が頭を反芻した。推測でしかないが、彼がどんな事をしてでも自らの会社を延命させる理由が、それなのかと考えた。彼が生い立ちに注目されインタビューを受けた際の雑誌は読んでいるし、内容も知っていた。しかし彼から直接、彼の人生の目的を事細かに聞いたりすることはなかった。聞き出したことも無い。だから、はっきりと言われた男の言葉に、自分は今まで感じたことのない何かを感じていた。長らく、葛城佐智絵という会った事もない女性を気にかけている事は分かるが、詳しい事情を聞くつもりもなかった。その女性に関する調査を命じられれば調べ、そうしていつものように日々を過ごしていた。
     それが、取引先である会社の人間の口から取っ掛りもなしに出た。その事を今、ホテルから出てきた彼の様子を見て思い出した。唐突に思い出した男の言葉ではなく、その時感じていたはずの怒りに似た感情が、腹の底で煮えた。
     自分にとって知るべきでは無い、知る必要のない彼の過去への感情。そんなものが自分にあるのかと呆れる。それが存在する意味もない。しかし男のにやけた顔が、男が自分の都合に合わせ半ば不躾に決めているだろう彼との予定が、ただ何をすることもなく彼を待ってきた時間が、何もかも癪に触った。そして彼が男と体を重ねた際にこぼしたであろう会話に、彼が開示した彼自身の過去に、あんな男へと開示した彼自身に、向けたことの無い濁った感情が湧いてしまった。妬みであり、怒りに近い何かだった。
     もう二度と、あの男との予定を組むことはしなくない。しかし彼にとってそれは望まぬ事で、それに抗う意味もなかった。自分は彼の人生の望みを、叶えるだけだ。
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    Replies from the creator

    nainaisokoniha

    DONE妄想してたら出来た学パロの室志(カプ描写なし)
    志摩野鷹也ハピバの室井の話。
    学パロだから2人が少し青くさい。
    学パロハピバ室と志 誰かがプロフィール帳に書き留めていたものから始まったようだった。
     自分の手帳の日付にも彼の行動予定などと同じように記しているが、今日は志摩野さんの誕生日だった。朝から色々な生徒が彼の元に来て何かしらの贈り物を手渡している。昼食時、横に座っていた男子生徒も、「おめでと〜」とコンビニで買ったような菓子を軽く渡していた。彼はどれもにこやかに受け取り、礼を言って自分の鞄にしまっている。
     放課後は学校に用はなく、そのまま下校する予定だった。そんな中でも、志摩野さんは廊下を歩いていると何人かの生徒に呼びかけられ、言葉と共に贈り物を渡されていた。
     次々と手渡される光景に、ずっと胸の内がわずかに落ち着かない。それは焦りに似た何かだという自覚がある。自分以外の誰かは、ただひたすらに祝福の言葉をかけたり贈り物をしたりしている。そんな中で自分だけが何もしていないような感覚が、無意味に思考を包んだ。しかし、自分という立場の人間が何かを贈るなど考えもつかない。仕えている側である人間が、何かを渡そうという気にはならない。この日が来る前からずっと、そんなつもりもなかった。だから色々な生徒が彼に祝福を手渡すのを後ろからただ見ているだけでいる。
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