真柳習作 オーストラリアの12月。照りつける太陽の下、世界各国のテニス選手たちが休日を謳歌していた。食材の買い出しに出かけるもの、川釣りを楽しむもの、はたまたのんびりと木陰で涼むもの。楽しみ方はそれぞれだったが、皆一様に気分が高揚していたのは間違いない。 柳のいるバーベキュー場は木陰。じゅうじゅうと肉の焼けていく音と仲間たちのはしゃぐ声、耳をすませば少し遠くから川のせせらぎも聞こえた。
「やあ、蓮二。」
「ああ、貞治。」網の上から目を離さず柳は答える。食材の――とくに網の上に堂々と横たわった大きなステーキ肉の焼き加減を見誤りたくない。
「よく焼けているか。」
「ああ。」
「そろそろ、魚が運ばれてくるころだから、調理担当のみんなに声をかけてと言われたんだ。あと、どれくらいかかりそうかな?」
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