図書館の返却カウンターに、ひときわ目を引く男が現れた。
洋服越しにもわかる引き締まった体躯、長身で隙のない立ち居振る舞い。身長はおそらく2メートル近くありそうだ。視線を向けずにはいられないほどの存在感に、空気が一瞬だけ変わるのを感じた。
「返却、お願いいたします」
低く響く声が、静まり返った空気を柔らかく震わせる。
「はい、承りました」
私が本を受け取ると、彼は静かに踵を返して新刊コーナーへと向かっていった。
手元の返却本の束は綺麗に整えられており、丁寧に扱われていたことが伺える。何気なく一冊を手に取りページをめくった瞬間、ふと目が止まった。
本の間に何かが挟まれている。
それを、そっと引き出してみると、それは白檀で作られた栞だった。
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