ある夜の話不快なほどの心臓の鼓動が耳を刺激する。
それが僕のものだと理解した時、自分で自分に呆れてしまった。
ベッドに押し倒したダニエル・ロウ警部補の表情が、いつもとまったく変わっていない事が、何故だか無性に腹が立つ。
それより何より、警部補がこうしてあっさりと押し倒されたという事実に驚いている。
今日、僕は初めて警部補と「仕事上の交渉相手」ではなく「プライベートの友人」として会い、警部補がよく行くというバーで一緒に飲んだ。
カウンター席に案内されて、警部補が僕の横にいるという緊張感からつい飲み過ぎてしまい、そのせいでバーのトイレに籠城する事態になってしまった。
落ち着いたので出てきたら、トイレ前で警部補が僕のコートを片手に待っていて、
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