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    ゆゆゆう

    @yoooou_me_2525

    金カム/月鯉(右鯉)/左右固定/20↑成人済

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    ゆゆゆう

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    リクエスト頂いた悪役令嬢🎏♀の逆転劇(月鯉♀)です!!こんな感じで大丈夫だったでしょうか…?
    解釈違いなどありましたら申し訳ありません🥲
    そして、犬童、鈴川、熊岸(熊子)推しの方は閲覧注意です💦配役上、こき下ろされておりますので…🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️

    婚約破棄にグラジオラスの花束を「音乃嬢、君との婚約を破棄させて貰う」

     鯉登音乃はたった今、婚約者である皇太子の鈴川に婚約破棄を突きつけられた。アカデミーの卒業パーティーという晴れ舞台にも関わらず、だ。周りの者達も騒つき、収拾がつかない状態になっている。そんな状況でも、音乃は少しも表情を崩すことなく、鈴川と対峙していた。音乃の隣に控えている護衛 兼 従者の月島が人を殺めそうなくらいの殺気を出して、剣に手をかけるが、音乃は至極冷静に彼を制する。
     音乃は美しいながらも、どこか近寄りがたい雰囲気を持っており、氷の女王と呼ばれている。その絶対零度と言われる冷たい視線を鈴川とその隣に寄り添い、勝ち誇った顔をしている熊子に向けた。
     目の前の泥棒猫は皇太子を自分のものに出来てご満悦のようだが、音乃にとっては心底どうでも良かった。それは、二つ程理由がある。
     一つ目は、この婚約が国の決まりに則った政略結婚だからだ。この国には貴族の女性は自分よりも身分が上の者としか結婚出来ないという決まりがある。皇家に次ぐ血筋である公爵家の娘である音乃には皇太子しか相手がいないという訳である。
     二つ目は、音乃は鈴川のことが嫌いであるからだ。鈴川は兄二人が亡くなったことで皇太子の座を手に入れた男で、本人が何か努力をしたという訳ではない。しかも、皇太子という立場に胡座をかいて、何一つ努力をしないクズっぷりである。国王の犬童も見て見ぬふりで、「音乃さんが皇后になると心強いよ」と音乃に全てを擦りつけようとしているのが見え見えだった。
     そんな婚約者に嫌気が差していた音乃はその美しい唇が弧を描くのを扇子で隠した。自分の立場上、皇太子に婚約破棄を申し出ることは出来ないが、彼から言い出したことならば……。これはまたとないチャンスである。

    「まあ! 驚きましたわ……理由を伺っても? 私もやられっぱなしは癪なので……理由次第では支払って頂きます。それ相応の対価を」
    「なっ!? 音乃嬢!! 私に逆らうのか!?」

     音乃のカナリアがさえずるよりもよく通る声がホール内に響き渡る。その一方で、鈴川の雑音のような怒声が酷く耳障りで月島は顔を顰めた。そんな彼の様子を見て、音乃は目を細める。
     音乃の凛とした佇まいに気後れしたのか、熊子は不安そうに鈴川の腕にその貧相な体を纏わり付かせ、「鈴川様……」と媚を含んだ声色で助けを求めた(皇太子の女の趣味の悪さには目も当てられない。鈴川なんてくれてやるが、こんな女に負けたとなると癪である、と音乃は考えている)。

    「音乃嬢!! 君の悪事は全てを知っている!! 熊子を陥れようと、ダンスパーティの時に彼女のドレスにインクをかけたり、彼女を仲間外れにしようと、他の令嬢に唆していたことを!!」

     そんなこと事実無根である。音乃は熊子のドレスなんて、記憶にもないし、興味もなかった。そして、他の令嬢から冷たい態度を取られているのも、彼女が音乃という婚約者がいる皇太子に媚を売って擦り寄っていく様を見て、不快に思っているからにすぎない。
     どうしたものか、と音乃は鈴川と熊子を見つめる。熊子はニヤニヤと勝ち誇った顔をしているのが、非常に子憎たらしい。
     音乃は苛立つ気持ちを抑え、口を開いた。

    「私、そのようなことはしていないのですが。証拠はありまして?」
    「ふんッ! 証拠ならたくさんあるぞ。見ろ、匿名の投書がこんなに!!」

     鈴川が従者に合図をし、証拠だという匿名の書面を箱に入れて持って来させた。
     音乃は酷い頭痛を覚え、ふーっと溜息を吐く。何だ、このボンクラは。熊子は美術を専攻しており、模写が得意なことを知らないのか。彼女にしたら、他人の筆跡を真似て書くことくらい朝飯前だろうに。音乃は心の中で毒付く。
     周りの者達も音乃と同じことを考えているのだろう。目の前で自ら醜態を晒す鈴川を見て、コソコソと耳打ちし合っていた。

    「それなら、ここにいる皆さんに聞いてみたらどうかしら? 幸い、今日この場には我が校のほぼ全生徒がいらっしゃいますから。皆さんにお聞きします。皇太子殿下が仰ったことに覚えがあって、投書した者は速やかに前へ」

     音乃の声だけがホールに響く。華やかで楽しいはずの卒業パーティーは凍りつくような静寂に包まれたままとなる。

    「な、何をしておるッ!! これは皇命だぞ!! 証人は速やかに名乗り出ろ!!」

     生徒達は戸惑いの表情を浮かべるものの、誰一人として前へ進み出る者はいなかった。それは当然のことである。熊子の自作自演なのだから。

    「これでお分かり頂けたでしょうか? 私が……公爵家の一人娘である鯉登音乃が誰かに濡れ衣を着せられるところだったことを」

     音乃の言葉に熊子の顔が真っ青になる。今更、気が付いたようである。音乃を陥れることに失敗した時のリスクに。

    「私は優しいので深く追及しないで差し上げます。……誰にでも勘違いはありますしね? その代わり、私からのいくつかお願いがありますので……それを呑んで頂けたら」

     音乃は、うふふ、と誰もが見惚れる表情で微笑む。鈴川が慌てて口を開きかけた時、現国王である犬童がホール内に飛び込んで来た。

    「婚約破棄など、私は認めんぞッ!!」
    「国王陛下、ご機嫌麗しゅうございます。残念ながら、もう決まったことですので……そうですわよね? 皇太子殿下?」

     先ほどまでの威勢はどこに行ったのか鈴川は金魚のようにパクパクと口を動かすことしか出来ない。それを見て苛立った犬童が怒声を彼に浴びせる。

    「この馬鹿者ッ!! 公爵家との婚姻はお前が次期国王になるためには必要不可欠なものなのに!! それに、公爵家の援助がなければ……皇室は……ッ」

     犬童が何やら喚き続けているが、もう既に決まったことである。父の平二に迷惑をかけるのは非常に心苦しいが、後は親同士でする話になるだろう。
     音乃はくるりと夜空のようなドレスの裾を翻して、愚か者達に背を向ける。月島は何も言わず、音乃の手を取り、主人の凱旋をエスコートする。

    「月島、帰りますわよ」
    「はい、音乃お嬢様」

     音乃は月島の手に触れると、パーティーが始まってから初めて笑顔を見せたのだった。



    「音乃お嬢様、公爵様と小公爵様にご相談なしで決めてしまって宜しかったのですか?」

     帰りの馬車に揺られながら、月島は音乃に尋ねた。月島の言葉に音乃の母譲りの特徴的な生え癖のある眉がピクリと動く。

    「馬鹿すったれ! 良いも悪いも、あんな奴らに舐められたまま黙っていられるかッ! おやっども兄さあも理解してくださるだろう」

     他の誰かに聞かれると皇族冒涜罪で逮捕されかねない発言であるが、ここには月島しかいない。あんなことが起こった後であるため、月島は咳払いするだけに留めた。
     そして、音乃は普段は公爵令嬢らしい振る舞いをしているが、家族や月島の前では素の姿を曝け出している。月島は公爵令嬢らしい振る舞いをする彼女より、素の彼女の方が好きだった。ただ単純に着飾らない彼女が好きということもあるが、彼女が特別に自分に気を許しているのが実感できることも大きな理由の一つである。

    「しかし……音乃お嬢様。皇太子でなければ……貴女様のご結婚相手は……」

     そう。その問題もあった。この国のふざけた決まりの一つ――貴族女性は自分より身分が上の者でないと結婚出来ない。公爵令嬢である音乃は皇太子と結婚しないとなると、もう結婚相手がいないということだ。

    「鯉登家は嫡男の兄さあがいるから大丈夫だろう。私はそうだな……恋人のお前と家業を手伝いながら過ごすのも悪くないだろう」

     音乃がうふふ、と艶っぽい笑みを浮かべる。月島は「ご冗談を」と言い、音乃から視線を逸らした。目敏い音乃は見逃さない。自分の護衛 兼 従者 兼 恋人の月島の耳がほんのり赤らんでいることを。
     音乃は向かい側に座っている月島の隣に移動する。「こらっ! 危ないでしょう」と窘める月島の声は無視し、音乃は彼の頬に触れた。自分の滑らかな肌とは違う男の肌。

    「キス、しよごたっ」
    「なっ!?」

     音乃と月島は秘密の恋人関係であるが、音乃が皇太子の婚約者という立場であったため清い関係だった。心は自分のものになっても、体は永遠に自分のものにならないと思っていたのに。月島はギュッと唇を噛み締めた。
     月島は恋焦がれた彼女の紅で彩られた唇に目が釘付けになる。それはまるで旧約聖書に書かれている禁断の果実のようだ。それを口にしてしまうと追放されてしまうのではないか、と月島は考え、ギリギリのところで理性を保つ。

    「……頭が固いやつめ」

     音乃はつまらなさそうに唇を尖らせる。あっさりと諦めた彼女に月島は表情には微塵も出さないが、安堵の吐息を漏らした。
     そうこうしているうちに帝都にある鯉登家の別荘に到着する。音乃の卒業パーティーのために、両親と兄が領地から帝都に来ていたのだった。音乃は月島の手を借りて、馬車から降りると、「音〜〜〜〜!!!!」と空を切り裂くほど大きな声で自分を呼ぶ平之丞が駆け寄って来るのが見えた。
     音乃は「兄さあ」と口を開きかけたが、平之丞の勢いづいた熱い抱擁を受け、「ぐうっ」と蛙が潰れたような声が代わりに漏れた。

    「音!! 聞いたぞ!! あの馬鹿がお前に婚約破棄を突き付けたとッ!!」

     もう噂が広がっているのか、と音乃は目を丸くして怒りに震える兄を見つめる。「こら、平。音乃も帰って来たばかりで疲れているでしょう。続きは中でしましょう」と母の雪が平之丞の背中を押した。
     音乃と月島は顔を見合わせると、どんな話があるのだろうかと緊張した面持ちで彼女に着いていく。
     庭園の中にある温室で、四人は音乃のお気に入りの紅茶を飲みながら円卓を囲んだ。何故か使用人である月島も雪に着席を勧められ、彼女と音乃の隣に緊張しながら座っている。目の前の平之丞はこれから雪が何と言うか分かっているのだろう。ただひたすら、国王と皇太子に対する罵詈雑言を呟き続けていた。

    「かかどん。おやっどの姿が見えないけれど?」
    「平ニさんは今銀行に行って、皇家への援助を打ち切る手続きをしているわ」

     音乃は想定よりも早い父の動きに驚きを隠せないでいた。そして、「迷惑をかけて……ごめんなせ」と沈んだ表情を見せる。平之丞は「音は悪うなかッ! 悪かとは、約束を反故にしてきたアイツらだ!!」と荒々しくティーカップを置いた。
     月島は平之丞を宥めながら、「それで……公爵夫人。音乃お嬢様はこれから……」と呟く。それだけで、雪は月島の言いたいことが分かったようだ。

    「それなんだけど……みんなで隣国の師団王国に移住しようと思ってて」
    「え?」

     音乃は想像もしていない展開に絶句した。そんな彼女の様子を見た雪は、先程と同様、何も言わなくても彼女の言いたいことを理解しているようで話を進める。

    「家門なら大丈夫よ。向こうに行っても、今と同じ地位と爵位を下さるようだから。それにね、音乃。貴女にとっても悪い話ではないのよ?」
    「かかどん?」
    「師団王国では、身分に関係なく結婚出来るの。音乃、貴女……本当に好きな殿方と結婚しなさい」

     雪が音乃に微笑む。平之丞が猿叫するものの、雪が彼の口を塞いだ。母は強し、という言葉を目の当たりにする音乃と月島。
     音乃は人生で初めて自分で選択出来る場面に遭遇し(両親や兄は公爵令嬢だから、と無理強いするようなことはなかったが、音乃は無意識に公爵令嬢としてこうあるべき、という選択をしていた)、戸惑い、困ったようにティーカップの持ち手に意味もなく触れる。
     そんな彼女の様子を見た雪は呆れたように助け船を出す。

    「そういうわけだから、うちの娘を宜しくね――月島さん」
    「ブッ」

     月島が勢いよく紅茶を吹き出して、咳き込む。音乃は自分のハンカチを月島に渡し、彼の背中を摩った。
     平之丞は「え? え? ええ?」と壊れた玩具のような声を出して、三人を交互に見つめる。自分だけ仲間外れだというのは、三人の様子を見て容易に察することが出来た。まさか、あの馬鹿皇太子から解放され、しばらくは嫁にいかず、家にいてくれるとばかり思っていた愛すべき妹に――恋人がいたなんて。しかも、それが信頼して妹を任せていた使用人(自分と同い年)。
     再び猿叫して倒れる平之丞を雪は執事に頼んで、彼の部屋へ運ばせる。そして、ゆっくりと公爵夫人らしい優雅な動きで月島と向き合った。雪は「月島さん、お返事は?」と首を傾げる。

    「え、あ、それは……大変身に余る光栄なことなのですが……本当に音乃お嬢様との結婚をお許し頂けるのですか? 公爵様は何と?」
    「平二さんは“生きちょりゃよか”とだけ」
    「おやっど……」
    「そ、そうですか……」

     父である公爵からお許しが出ているならば、後は本人次第である。月島は音乃をじっと見つめた。彼女の菫色の瞳が期待で煌めく。彼女の完璧な造形の顔立ちの中にある瞳は美しい箱に入っている宝石のようだった。
     音乃の様子から、プロポーズをしても断られるということはないはずなのに。長年、口に出すのを躊躇って来た言葉は、鉛のように重く、なかなか出てこない。

    「お、音乃お嬢様……俺と結婚してください」
    「……はい、喜んで」

     やっとの思いで絞り出した言葉は僅かに掠れ、震えてしまった。しかし、音乃はまるで月島の言葉を宝物のように噛み締めた後に、大輪の花のように微笑みながら、彼の妻になることを承諾したのだった。
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    ゆゆゆう

    DONEリクエスト頂いた悪役令嬢🎏♀の逆転劇(月鯉♀)です!!こんな感じで大丈夫だったでしょうか…?
    解釈違いなどありましたら申し訳ありません🥲
    そして、犬童、鈴川、熊岸(熊子)推しの方は閲覧注意です💦配役上、こき下ろされておりますので…🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️🙇🏻‍♀️
    婚約破棄にグラジオラスの花束を「音乃嬢、君との婚約を破棄させて貰う」

     鯉登音乃はたった今、婚約者である皇太子の鈴川に婚約破棄を突きつけられた。アカデミーの卒業パーティーという晴れ舞台にも関わらず、だ。周りの者達も騒つき、収拾がつかない状態になっている。そんな状況でも、音乃は少しも表情を崩すことなく、鈴川と対峙していた。音乃の隣に控えている護衛 兼 従者の月島が人を殺めそうなくらいの殺気を出して、剣に手をかけるが、音乃は至極冷静に彼を制する。
     音乃は美しいながらも、どこか近寄りがたい雰囲気を持っており、氷の女王と呼ばれている。その絶対零度と言われる冷たい視線を鈴川とその隣に寄り添い、勝ち誇った顔をしている熊子に向けた。
     目の前の泥棒猫は皇太子を自分のものに出来てご満悦のようだが、音乃にとっては心底どうでも良かった。それは、二つ程理由がある。
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