もしもの未来の話。 プロローグ今から23年程前の冬。
カルタ星のとある街全体が、炎に包まれた。
犠牲者はおよそ█万人程。生存者は、一人も確認できず。
その街は、かつて悪名高き犯罪者組織「██████一家」によって支配され、ありとあらゆる犯罪が蔓延っていた。うっかり踏み入れた者は引きずり込まれ行方を眩ます。…いや、おそらくその中には街の一部と化した者もいたのだろう。
カルタ星の政府は其処を「闇夜の街」と呼び、他の星からの訪問者が近寄らないよう、存在を知られないよう対処を施してきた。
…その為、政府の他に街の存在を知るのは、一部の宇宙警察と、どういう訳か人伝で聞いただろうほんの数人の異星人だ。
─それが街ごと炎に包まれたその夜に、宇宙全体のメディアの報道によって、カルタ星以外の星の者は衝撃と共にその街の存在を知る事になった。
その炎は、どういう訳か5年ほど燃え続けた。
そして鎮火した後も灼熱の熱気は残り、その理由を探りたいという好奇心一心で勝手に踏み入れた為に救助隊が出動する事案が起きる事があった。
…そして、
あの大災害の大元の原因が解らず星間連盟の間でも未解決ファイルの1つとなり、23年経った今でも、その区域は封鎖されたままだ。
生存者もなく、その上かつては犯罪が蔓延る街。
一時期ニュータウンとして再建しようという提案もあったようだが、数年も燃え続けた街なぞ誰が寄るものかと懸念の声が多く却下された。
こうしてここ数年前に熱気はようやく引いた今も、無人地帯として政府に管理されているのだ…。
─以上、定年間近の上司から伝えられた、かつて「闇夜の街」と呼ばれた場所の情報なのだ。
何故2年目を迎えるだろう刑事のこの僕に、その話をしたのか。
かつて上司がまだ若い頃、以前から彼の先輩達があの街について調査しており、上司もその一員として加わったのだ。
他の星からの訪れただろう行方不明者について、各場所にて起きた不審死、そして建前上では一企業取り繕っていたあの「██████一家」について…上司の先輩の分を加えると、数十年も調べていたのだ。
それが23年前…つまりあの日に全てを滅茶苦茶にするような出来事が起きたのだ。
当時の僕はあまりにも幼かったせいかニュースを見てもそこまで記憶に残る程ではなかったが、上司にとってはあの炎のせいで灰になったようなものだったそう。
それからはその街について調べる者がいなくなり…とうとう上司のみになってしまった。
調べる手がかりが潰えてしまいもはやこれまでと思ってたその5年後に、思わぬ出来事が舞い降りた。
そう、あの灼熱の熱気について好奇心一心で調べにきた…その人の捜索に出た救助隊の中に新たなキーパーソンがいたのだ。
灼熱の熱気が残るあの街の中で発見されたとされる、あの組織の関係者の…その親族に当たる者だった。
その身元確認に関しては当時関わった担当と、親族の当人、そしてその人の所属する救助隊の隊長とその同僚の一部のみに知る事となっていたのだが、上司は手荒な手段を使ってその情報を引き出したのだ。……正直言って後輩としてでも、流石にやり過ぎではと思うほど聞いてて内心少し引く内容だった。
しかし、その発見された数日後、その人は救助隊を辞めてしまい、行方を眩ますこととなった。
同時にその人の所属していた救助隊からもこれ以上関わらないでくれと苦情を兼ねた報告が本部に来た事により、上司は指摘され処分を受けたのだという。
ただ上司としては、長年調べてきた物を今更手離す訳にはいかなかった。あの街に搾取され、犠牲となった者達の無念を晴らす為に、たった一人で今日までそうして調べてきたのだ。
こうしてようやく、長いこと行方不明だった「最大の手掛かり」の現在の行方と状況を知ることが出来た。
そして記録と調査などを纏め上げられた資料を渡し、僕にこう伝えた。
「あの忌々しい街の犠牲となった者達の無念を晴らす為に、真実を解き明かすのだ」と。