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    4月1日なので、IFルートの未来の話でも。

    もしもの未来の話。 エピローグ最初はほんの好奇心だった。
    18年前に新米隊員として入ったキミは、所謂とっても無口で、隊長相手でもなかなか自分の事を話さないような子だった。
    そして時々性格が変わるような、変わった子でもあった。
    そんなキミを知る為に、キミ自身が心を開けるように、「カウンセリングを施す」という名目で会話を試みた。

    結局はカウンセリングがなくとも、時間と共にキミは色んな隊員に話すようになっていった。
    それでもカウンセリングを続けることにした。
    医師としてでなく、ボクはキミの事を、キミの奥底に隠している物をどんどん知りたくなっていた。


    キミが来て1年経った頃、レスキュー隊の皆でキミの誕生日を祝う、はずだった。…それが突然の探索依頼で訪れた場所でキミの家族と最悪の形で出会う事になった。
    …そして身元確認の結果、キミのお爺さんは、あの場所…かつての「闇夜の街」を支配する組織の関係者で、キミはその血縁にあるという事が明らかになった。
    それから1ヶ月ほど経ち、本部の近くにある教会で、キミのお爺さんの葬儀がようやく行われた。
    キミは聖歌を歌うこと以外終始無言で、表情も変えることなかった。
    それを不思議に思ったディンゴは悲しむ顔1つくらい出せばいいのにと一言を漏らしたのを皮切りにコリーと口論になり、隊長が間に入って止めに入ろうとした。
    その光景を遠くから眺めただろうキミは、変わらず無表情で何一つ言わず、教会の中へと戻っていった。

    その翌日、キミは突然いなくなった。
    隊長の口から、キミが上層部に退職届を出して去った事を告げられた。まさに、悲しみを堪える表情で。
    コリーは嗚咽を漏らし、ディンゴはまさに落ち込んで俯いている。
    あのバーナードですら、1週間ほど静かになっていた。
    ラッセルは比較的に冷静を保ち続けている。
    ボクは ただ呆然としていた。

    それからの間は色々あった。

    ラッセルは、企業を継ぐ事を理由に辞めることになった。
    彼が去った後、これでアイツのお母様に絡まれる事は無くなるのは少し寂しくなるなと、ディンゴは安堵も交えながら話していた。
    今でも稀に、救助に役立つ道具を開発しては、かつていたレスキュー隊に寄付するなど交流があったりする。

    バーナードは、凄腕のパイロットとして惜しまれながらも、定年間近を機に引退。
    「もしベルちゃんに会えたら、ニジョウ星に是非遊びに来てクダサーイ!…とミーからのメッセージデース!」と言葉を残して、母星に帰っていった。
    医師としては、元気に暮らしていれば…と思いつつも、結局引退する最後まで偏食が治さなかったのだから正直不安でもある。

    ディンゴとコリーは…あの葬儀の件があってから、暫くは2人の間は気まずい空気が漂っていたけれど、数年位してようやく落ち着いたみたい。
    そしてコリーの大食いは相変わらず健在である。

    隊長は…キミの事を本当に期待をしていた。ディンゴがキミに嫉妬するくらいに。
    キミが去ってから、あの葬儀が行われた、かつてキミがレスキュー隊に入る前にいたという教会の牧師に、キミの所在について問い掛けたのだそう。
    …でも牧師は答える事はなく、終いには
    「…もう今後あの子に関しては、一切関わらないで下さい」と帰されてしまった。
    どうやら救助犬を扱えるのは隊長以外でキミだけだったようで、今後その人材が現れる事がないのかと暫く悩んでいた…けれど数年後にようやく現れたようで、一件落着となった。
    今でも隊長としては現役で、次の世代への交代まではまだ先のようだ。

    ボクはと言うと、今でもレスキュー隊のドクターをやっている。
    …それに最近入った隊員の口から、キミの事についての話を耳にした。
    何でもあの教会は、児童養護施設も兼ねていたようで、彼は其処で育ち、キミのお世話になった事があるのだそう。
    そして彼が言うにはキミは牧師になり、先代が亡き後は、家族と先代の骨壺と一緒にカルタ星へと帰り、そこの教会にいるのだとか。

    ─そうして今日は久しぶりの休暇なのをいい事に、キミがいるとされる町を目的に、カルタ星に足を踏み入れた。

    カルタ星は田舎だとよく言われているようだけど、ボクからしたら確かに都会とは言えないけれど、田舎という程なのかなと思えた。
    それともこの町自体がそうだからだろうけど。

    この町は、昔キミの家族を見つけたあの場所─かつて「闇夜の街」と呼ばれた所の隣町だったが為に、あの大火災があってから暫くは住民以外の人があまり寄り付かなくなったり、たまに好奇心目的で訪れる者が現れたりする程だったらしい。
    それ以前からここの地元の人達は「闇夜の街」を警戒している為に決して近寄らず、観光などでよそから来た人達には近寄らないよう声掛けしてきたとか。
    そうして十数年も時を経て、ようやくかつての穏やかさを取り戻したのだそう。
    …これは途中で行き合った、知り合いの刑事くんから雑談がてらに聞いたお話である。
    途中まで一緒かと思いきや、教会に辿り着いた時、まさか彼と同じ目的地だったのは驚いたよ。


    「─と、そういう訳なんだよねえ。」
    医師が事の全てを話終えると
    「…全く、流石"先生"ですね。」
    「ひょっとしてボクの事とか、待ってたりとかしてたのかなあ、うふふ。」
    にこにこと笑う医師に対して牧師は呆れたように溜め息を吐いた。

    牧師から訊くこと全て聞き終えた刑事が帰った後、夕暮れに差し掛かる中、教会裏の庭で医師と牧師は2人きりで話していた。
    十数年振りの再会に医師は嬉しそうに語る一方で、牧師は内心複雑な気持ちで見ていた。
    おまけに本来は刑事との対面である程度打ち明ける予定だった内容を、まさかの訪問で現れた医師に端から全部聞かれたのだから。
    謂わば牧師にとって彼は、一言で言えば昔から一筋縄でいかないような相手である。

    「─…そう言いましても、10年も現場から離れている以上、今更戻ることは出来かねます。…仮に年齢が理由でなくとも、バーナードさんとは違って何かと優れた特別な理由なんて、ないのです。」
    「年を取ったのはお互い様だもんねえ。バーナードの事は別として、別に年齢が理由だからできないって事はないと思うよお。
    …でも、今のキミはこの町の教会の牧師である以上、難しいのは確かだねえ。」

    医師からして、
    牧師から刑事に話した「闇夜の街のこと」「大災害の真相」については、
    到底全て語りきったとは思えない。
    昔、たまにおやつを隠れて多く食べたことを隠し通したりしていた事を思い出したが、その様より巧妙になってはいるものの、まだ大事な事を隠しているような、そんな気がしたからだ。

    「…正直言って、自分が選んだ道はこれでよかったのか…今でも考えてしまいます。
    何も言わず去った事で、レスキュー隊の皆に迷惑を掛けた事については後悔してます。
    …それでも、話を聞く限りでは、結局は何だかんだでいいようになるもんだなあ、と感じました。」

    「…どのみちキミが決めた事だから、正しいかどうかはキミにしか解らないよ。
    でも…"思い煩いは、何もかも神様にお任せ"って言うでしょお。うふふ。」
    「…それは皮肉と捉えても?」
    「まああくまでボク自身の考えとしてだけど、できたら隊長とコリーには会った方がいいかもねえ。」
    …牧師は、黙って俯いた。

    「バーナードなんかはもう、お爺ちゃんだからねえ。折角だから元気でいる内に今度久しぶりに顔を見せてあげに来たらどうかなあ。きっと嬉しいだろうし。」
    「…そうしたい気持ちは山々ありますが、ここの牧師はたった一人ですし、休みなどは…」
    「そういうのも神様にお任せしといた方がいいんじゃないかなあ。」
    そう医師が微笑むと
    「…今度、考えさせて頂きます。」
    牧師は目を瞑って頷いた。

    ─それにしても、お互い年を重ねたけれど、キミのそういう所は昔から変わらないねえ。
    キミはもう「新米くん」ではなくなったのに、相変わらずボクの名前を呼んでくれないし。

    キミのお爺さんの事はともかく、
    どうしてあの日カギヤ星の教会にいたキミが
    「大災害の首謀者は祖父ではない」
    「祖父はあの街の支配者に殺された」
    と言えるのかなあ?

    刑事くんとの話の間に「あの頃に戻りたい」と漏らしていたけど、それはどの昔の事だろう?

    …それを尋ねてみようとも、キミはきっと答えないのだろう。
    その意味も、理由も、本当のことも。ぜーんぶ、隠したまま。

    今、2つに並ぶ小さな墓石を眺めているキミに訊きたい。

    自らが幸せになることを許さず、ただひたすら自らに嘘を吐きながら生かされ続け、
    「何だかんだで結局は皆幸せに生きている」と言っているキミにとっては、
    本当に “何だかんだでいいようになって” いるのかなあ?
    ねえ、オルトくん。
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