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    カラオケデート鬼典!

    #鬼典
    devilish

    カラオケデート鬼典カラオケデート鬼典(現パロ)
    大学生ぐらいのイメージ

    「なあ、一緒にカラオケ行こう」
    「おれと?」

     鬼丸は現在、大典太とカラオケデートに来ている。鬼丸はカラオケに来るのが初めてだ。好きなアーティストは何組かいるが、自分で歌うことは滅多にしない。歌を歌うなど、高校の卒業式で校歌を歌ったのが最後ぐらいだ……
    「三時間も歌うのか?長くないか」
    「カラオケでの三時間なんて一瞬だよ」
    「そうなのか……?」
     鬼丸は大典太の言葉に首を捻ったが、とりあえず大典太に連れられて狭い個室に入った。
    「ドリンクバー行ってくる。あんたはなんかいるか?」
    「コーヒー。それがなければなんでもいい」
    「ん」
     個室に取り残された鬼丸は部屋をぐるりと見渡した。狭くて落ち着かない。壁に取り付けられたモニターから、芸能人が楽しげに話すCMが流れている。
    (低音が響いてうるさい……)
     帰ってきた大典太に話したところ、『デンモク』なるものを操作して音量を下げてくれた。
    「うるさかったら好きに調節していいからな。マイクの音量もいじれるから」
    「わかった」

     大典太がマイクを取ったので早速歌うのかと思ったが、大典太はマイクを机に置くと食べ放題のソフトクリームを食べ始めた。なかなか自由な振る舞いだ。
    「……歌わないのか」
    「歌う。でもその前にちょっと食べる」
    「そうか」
     ソフトクリームを四分の一ほど食べた大典太が、タッチパネルを操作し始める。
    「あんた、先に歌うか?」
    「あー……お前が先に歌ってくれ。おれカラオケ初めてだからよく分からん」
    「ん。じゃあ……これ歌おうかな」
     流れ始めたのはバラード。大典太の好きなアーティストの曲で、鬼丸も何度か聴いたことがあった。
     イントロの間に、大典太が持ってきてくれたドリンクバーのコーヒーを啜る。酸味が強く、あまり美味いとは思えなかった。

     大典太の歌声は、非常に心地よいものだった。やさしく甘い歌声だ。たまに音を外したって、そんなの気にならないほどに、鬼丸は彼の声が好きだ。

    「……う、ふふ。ちょっと恥ずかしいな」
     歌い終えた大典太が照れくさそうに笑った。
    「上手かったぞ。お前、歌が得意なんだな」
     鬼丸が素直に褒めると、大典太の耳が赤くなる。
    「得意だなんて。……でも、歌うの、好きだから……褒めてもらえると、うれしいな」

     その後も大典太は休憩と言ってすこしソフトクリームを食べ、一曲歌った。
     歌い終わる頃には、残りのソフトクリームはすっかり溶けてしまっていた。
    「あー、溶けてる……」
    「まあ、あのスピードで食べてればな……」
     大典太はしょんぼりとしていたが、いきなり鬼丸のコップを取ると、飲みかけのコーヒーに溶けたソフトクリームを流し込みかき混ぜた。自由すぎる。鬼丸が怒らないから、余計に彼は自由に振る舞ってしまうのかもしれない。
    「あ、おれのコーヒー……」
    「いいんだよ、あんたどうせこの味好きじゃなかったんだろ」
     図星だ。大典太はアイスが混ざったコーヒーを一口飲んで、満足そうに口角を上げた。
    「ちょっと甘くなった」
     コップをずいっと突き出されたので、鬼丸はそれを受け取って一口啜った。確かに甘くなっていて、先程に比べれば美味いと思う。
    「……悪くないな」
    「だろ。……それで、あんたは歌わないのか」
     忘れていた。今日は大典太が歌うばかりで、鬼丸はぼーっと聴いているだけだった。
    「おれも歌おうか。……あまり上手くないが」
    「いいんだよ、下手でも。楽しく歌うのが一番なんだから」

     鬼丸が選んだのは、少し前に流行ったJ-POPだ。
     自分の声が部屋中に響くのが恥ずかしい。鬼丸は歌いながらタッチパネルを操作して、エコーを弱く、マイクの音量をやや小さく設定した。それを見て大典太が笑ったような気がするが、気にしないようにして画面の歌詞を目で追いながら声を絞り出した。

    「あんた、意外と上手いじゃないか」
    「……そんなことないだろう」
     歌い終えた鬼丸は、喉を落ち着かせようとコーヒーを飲んだ。歌いやすそうだと思って選んだ曲だったが、鬼丸が歌うには少し高かった。
     低めの曲を探しながら、大典太が歌うのを聴く。鬼丸が歌っている間は、大典太が嬉しそうに鬼丸を見つめる。
     そうして、三時間が経過した……

    「ふう、けっこう楽しかったな」
    「そうか」
    「あんたはどうだった?」
     帰り道、大典太が鬼丸の顔を覗き込んで問う。
    「……歌うのは苦手だ」
    「うん」
    「でも、……また行きたい」
    「!……ん、また行こう。一緒に」


     後日。
     鬼丸が真剣な顔でスマホを触っている。
    「何してるんだ?」
     大典太が聞くと、鬼丸はスマホの画面を見せてくれた。画面にはメモアプリが表示されている。
    「メモ?」
    「おれが歌える曲をリストアップしている」
    「ま、真面目……」
     大典太はその真面目さに驚いたが、それと同時に鬼丸がカラオケへ行くのに積極的になっていることを感じ取り、頬が緩んだ。

    「来週末ヒマか?カラオケ行きたいんだが」
    「ああ。行こう」
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