ヤドリギの下では誰も 冬の雲も少ない晴れた朝。
それは久しぶりに休日が重なるタイミングだった。アベンチュリンがクリスマスマーケットに行ってみたいということだったので、ピアポイントからは離れた静かな漁師町でクリスマスの時期だけ開催されるクリスマスマーケットを訪れたのだった。
レイシオの目の前を歩く金髪の恋人は興味津々で、いろんなものに視線を向けていた。
「見て!レイシオ、不思議な形の人形!」
「それはくるみ割り人形だ」
まるで万年筆のインクを吸い込む吸い取り紙のように、見たものの疑問を横のレイシオに投げ、その回答を吸収しているようだった。
「これでくるみを?あごの部分がそういう仕組みなのか…そういえばさっきから売られている同じ形のクッキーばかりなんだけど、そういうお祭りなの?」
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