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    gnsnmta

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    gnsnmta

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    前に書いたレイチュリを手直ししました。
    ピクシブにも同じものを投稿しています。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23391586

    #レイチュリ
    Ratiorine

    アティニークジャクの羽を休めて ツガンニヤという星は一日の寒暖差が激しい。日中帯は日差しが大地を焼きつくし、痛覚を伴うようだった。かと思えば、日も暮れて日差しがなくなった途端にまるで太陽などこの世界に一度たりとも存在していないかのように一気に冷え込み、足元から体温を急速に奪い取る。住む人類にとってはあまりにも容赦のない環境であり、エヴィキン人はその過酷な環境を日々生き抜いていたのだった。

     しかしそれも今は昔。カンパニーがあるピアポイントの気候は温暖ではあるものの、夏から秋にかけての季節の移り変わりには身体がその遠い記憶を呼び覚ましてしまうようだった。
    ——「カカワーシャ、ほらもう寝る時間よ、目を閉じて。カカワーシャの具合が早く良くなりますように、地母神さまにこの想いが伝わりますように」
     小さな姉の囁き声を思い出す。小さい頃は地母神のご加護のお陰で大きな怪我はしなかったものの、夜になると熱を出して夜通し姉に看病してもらう、そんな子供時代だった。



     レイシオがこの件に気づいた最初のきっかけは、普段なら遅くてもアベンチュリンに会う前には送られてくるはずのミーティングの詳細が送られてこなかったことだった。
     今日行うのは外回りではなく社内でのミーティングであり、アベンチュリンには連絡を入れるよりも直接向かった方が早いだろう。いまだ連絡のない端末をポケットにしまい込むと、アベンチュリンの執務室へ向かった。

    「悪いね、うっかり連絡をしていなかった。教授の手を煩わせるなんてどうお詫びすればいいんだろうね、後で信用ポイントを受け取っておいてくれ。それにしても、さすがレイシオだ。君の視線には先を見通す力がある。羅浮のなんだっけ、そうだ、太卜司でも通用するんじゃないかな」
    扉を開けて出迎えたのはキーボードをカタカタと打ちながらまだ声も掛けていないレイシオをアベンチュリンは歓迎した。
    「はぁ、喧しい。口を閉じてすみやかに資料を渡せ」
    「はいはい、これが資料。信用ポイントを送ろうとしただけで君から落第点をもらえそうだ。この資料だけど大した内容じゃないし、すぐに読み終わると思うよ」

    はいどうぞ。資料の入った封筒を受け取る際、端末から目をそらさずに手渡したアベンチュリンの指先が自分の指とほんの少し触れ合った。ほんの一瞬だが、アベンチュリンの指先は極端に冷たかった。カンパニーの空調は過ごしやすいように整えられているはずだが。

    「すぐに読み終わるか、重要か否かは君の決めることではないだろう。僕が決める」
    「うんうん、教授の頭は回転が速いね。僕も頭の回転が良い方だと自負しているけど、教授とは到底比べものにもならないよ。
     ふふっ、今日のミーティングもよろしくね、レイシオ。よかったらミーティングが始まるまでゆっくりしていってよ」
    「ふん。」
     
     過剰な猫撫で声とアベンチュリンから飛んできたウインクを軽くいなして受け流し、執務室に備え付けの来客用ソファへと腰掛ける。自分の籍がある技術開発部のデスクまで戻るのは億劫だ。手元の資料を読み終える頃にはミーティングへ向かうちょうど良い頃合いになるだろう。
     しかしレイシオはふと、資料の内容とは別に今までのやりとりに違和感を覚えた。少しずつ思考を巡らせる。アベンチュリンの返事の調子の良さは日常とさして変わらないだろう。そのあたりは少し過剰とも思えた。加えてアベンチュリンの声が少し上ずっているように聞こえた。
     レイシオがアティニ―クジャクと評するほどに外見だけでなく意味のない言葉やはったりも含め、アベンチュリンは言葉数は多い方である。だが、モニターから目を離さないあたり、仕事の進捗としてはあまり余裕のない様子がうかがえる。その割にはリアクションがやけにオーバーなように聞こえた。
     資料をざっと読み込み終えると、レイシオは少し意識してアベンチュリンの様子を伺うことにした。あからさまな熱や咳などは見られないが、体調が良くない可能性が高いとみたのである。
     戦略的パートナーといえど、お互い良い年をした大人だ。そんなあまりプライベートな部分にまで深入りはしたくないが、見ていれば見るほどに調子の悪さが目につく。キーボードを打つ音は遅く、なんどもデリートキーを押している様子が見られた。息遣いも少し荒く感じた。気づいたからには煩わしいものの、レイシオは無視ができなかった。

    「君はまた深夜までカジノに入り浸っていたのか?夜更かしは感心しないが。」
    「またって…僕も高級幹部の端くれだからね。これでもいくつものタスクを抱えている身でね。カジノだっていつもいるわけじゃないさ。だからそんな目で見ないでくれよ、モニター越しでも見えているよ」
    「それは失敬した。ギャンブラーはマルチタスクが苦手な部類だったか」
    「君ね…いや、ちょっと寝つきが良くないだけだよ。最近癒しが足りてないだけなのかなぁ、あーあ…うちにいる創造物たちにも構ってやれてないし、ご機嫌伺いも兼ねておもちゃでも買ってあげようかな」

     そうだ、レイシオもうちに来るかい?彼らも久しぶりに君に会えると思うと喜ぶと思うな。
     彼の虹模様の瞳はレイシオからは少しずらされ、早口で捲し立てられた。あらかじめ決めていたかのような定型文の受け答えを流暢に唱えた、そのように感じられた。

     ギャンブラーのことだからと徹夜かと鎌をかけてみたが、聞いてみるとどうやら寝てはいるらしい。普段の彼も睡眠時間はいささか短すぎるが、社内ツール上で共有されているスケジュールを盗み見る限り、仕事に押されて短くなったわけではないようだ。

     ただし、先ほどから操作する端末のモニターは同じところを映している。ミーティングの開始時刻が迫っている割には頭に入って来てないようだった。

     隠し通せているつもりのようだが、レイシオはあまりにも見ていられなかった。
     ため息をひとつ吐き、この状況下で考えうるひとつの推測をアベンチュリンに投げかけた。

    「乾燥した地域では湿度がないことにより夜になると気温は急激に冷え込む。
     太陽の熱がある日中帯は日差しにより暑く感じるが、夜の寒さはその真逆だ。最高気温から四十度ほど落ち込むため、人間の体にも影響が出るほど過酷だ。なおその乾燥した地域とはどこのことを指すか。そう、雨などの水を蓄えられない砂漠地帯のことを指す。」
    「なんだい、レイシオ。突然、何を言い出すかと思ったら…それは地理の講義かい?ミーティングの前に行うにはテーマが不明瞭だけど、教授にはなにか共通するテーマでも見えているのかな。学のない僕じゃ分からないけど、君の講義が聞けて嬉しいよ。」

    のらりくらりと言葉を交わすアベンチュリンに、鼻をならしレイシオは説明を続ける。

    「ふん。具体的な地名を例に挙げるとすれば、いわゆる君のいたツガンニヤのような惑星のことだ。君は暑さや寒さなどの過酷な状にも強いと豪語するが、寒暖差にはあまり慣れていないようだ。もしくは過去の感覚、記憶として身体に刻まれているせいか。幼少期の記憶から深層心理で苦手意識を持っているか。どうだ?」

     アベンチュリンの顔が少し強張る。ギャンブラーの十八番であるポーカーフェイスすら保てないくらいには事態は深刻だったようだ。レイシオはソファから立ち上がり、アベンチュリンの座るデスクまでゆっくりと近づく。アベンチュリンの慌てた様子もお構いなしに、そっとアベンチュリンの手を自分の手で重ねる。
    「どちらにせよ、社会人、特に責任のある立場としてコンディションの悪さを誤魔化すことや無理を通そうとすることには感心しない。
     思った以上に冷たいな…どうして手が冷たくなっているんだ?寝不足や冬の君ですらここまで冷え切ってしまうことはなかったはずだが」



     アベンチュリンは言われてから初めて自分の不調に気づいて驚いた。自身でもよく分かっていなかったのだ。レイシオにまざまざと身体の不調を寸分違わず言い当てられてお得意のポーカーフェイスもうまく作れず動揺が隠せなかった。
     なんだか寝つきが悪いとは思っていたものの、言われてみれば寒気から寂しさを感じて遠い記憶で姉を求めたことを思い出してしまうからだった。そのことを指摘されて初めて気付くくらいには衝撃だった。
     アベンチュリンの足元からすっと力が抜けていった。動揺したからだろうか、アベンチュリンの視界がぐらつき、暗転した。

    「アベンチュリンッ!」
    ——レイシオが遠くで叫んでいるような気がした。
    まるで世界が目を閉じてしまったかのように感じられ、耐えきれずアベンチュリンは床に倒れこんだ。


    ※※※

    (あれ…?)
     アベンチュリンはいつの間にか自宅のベッドの上で寝ていることに気づいた。
     いつも着ている寝間着ではないが、アクセサリー類やジャケットは全て取り払われており、シャツとスラックスのみの軽装に変わっていた。今日は非番の日ではないのになぜ。
     少しずつ直近の記憶を思い返す。そうだ、今日はレイシオと合同のミーティングがあったはずだ。締め切りが明日に迫った報告書もいくつかあったはずだった。レイシオに資料を渡した後、途中から意識を飛ばさないように気を張りつめていたのは覚えているが、レイシオとの会話の途中から、そして職場を出た記憶が思い出せない。
    「もしかして僕、倒れた…?」
     自身の記憶のあやふや加減と軟弱さに嫌気がさした。もう一度考え直そうと意識を切り替えようと首を動かそうとしたところ、少し開きっぱなしになっている扉の向こうから声が聞こえてきた。創造物たちが三匹協力して器用にドアを開けるはいつものことだ。しかしそこから聞こえてくる声は創造物に加えてもう一人。
     招いた記憶のないレイシオと創造物が会話しているようだった。

    「りんご!ぼくたちもたべる!」
    「りんご!ぼくたち、果物だいすき!」
    「りんご!あまくてしゃりしゃりでしょ、食べれるよ!」
    「生憎だが、これは君たちの分ではない。」

    三対一で頭数だけで言えば多勢に無勢である。どういうわけか我が家にいるレイシオはどうやら創造物たちに抗議を受けているらしい。

    「えーーれいしおのいじわる」
    「れーしおのけち!ちゅりんずるい!僕たちもたべたいのに!」
    「静かに。アベンチュリンは体調が良くないんだ、君たちは扉の前までだ。あとで別のものを用意するからリビングで待っていなさい」

     話の内容をくみ取ると、あのレイシオですら創造物たちの勢いには負けたようだった。創造物たちは見事レイシオから約束を勝ち取り、レイシオとの仲は良さそうだ。いくら創造物と馴染みがあるからってあまりレイシオを困らせないでくれるといいんだけど。

    「はーい」
    「ちゅりんよくなって」
    「れーしお、約束はわすれないでね!」
    「分かったから、君たちは待っていろ」

    話す内容が徐々に明瞭になってきたと思っていたら、レイシオは寝室の扉まで来ていたらしい。足音が近づいてきて、レイシオが枕元に来たのを感じて目を開ける。

    「ようやく起きたか。りんごをすりおろしたものを用意した。僕の母がよくしていたから同じようにしてみたが…食べられるか?」
     心配そうな声色で、気遣いながらそっとアベンチュリンに声を掛けてきた。
    レイシオは常日頃から公明正大を声色にのせたかのように、意識的な発声をする。それがまるで講義のようで学校に通っていなかったアベンチュリンにはとても興味深かった。しかし今はその様子は見る影もなく、やさしいテノールの声に心地よさを感じた。レイシオってそんな声も出せるんだ…それがまた特別な一面を知ることが出来たようでアベンチュリンはくすぐったく感じた。

    「ん、食べる…」

     我が家にりんごなど存在しない。普段から食事を家で取ることはしないからだ。りんごを用意するどころか、それ以上にわざわざすりおろしだなんて手間のかかったものを教授が手ずからこなすことに驚きであった。
     その甲斐甲斐しさに驚きながら器を受け取ろうとシーツから手を出して伸ばしたところ、レイシオが巧みに手から器を避ける。

    「こぼすから、やらなくていい。ほら、口を開けろ」

     なんと今日の教授は至れり尽くせりで、世話をしてくれるようだ。
     あまりの特別待遇にアベンチュリンはどぎまぎしながらも雛鳥よろしく口を開けると、レイシオ特製のりんごのすりおろしは、ひんやりとした果汁とすりおろされた果肉とともに喉を潤していった。
     レイシオがアベンチュリンの口の中に何度か匙で運び入れると次第に器は空になり、アベンチュリンの意識もだいぶはっきりしてきた。

    (あーあ…ミーティングもすっぽかして、世話までさせて…きちんとお礼をしなくちゃ…)

     なんて言おうか。ありがとう、迷惑かけてすまなかったね。世話代として信用ポイントを君に送るよ。こんな感じかな、ああでも倒れる前に断られたんだっけ。どうしたらいいかな…頭が回らないや
     声をかけようとした瞬間、レイシオの方が先に言葉を発した。

    「いい。何も言わなくていい。寝ろ。話はそれからだ。あと何度も言うようだが信用ポイントの話はいま一番聞きたくないワードだ。」

     さすがは戦略パートナーといったところだろうか。口を開けなくても伝わっていたようだ。それにしても言いたいこと全て言われてしまって居心地が悪い。
     アベンチュリンは頷くと同時にシーツを伸ばし、顔の半分まで掛けてごまかした。
     レイシオもそのばつの悪そうな仕草に気づいたのか、ふっと笑う声と同時にアベンチュリンの額に冷たい手が乗せられる。

     レイシオの手のひらの冷たさがとても心地がいい。アベンチュリンはその心地よさに目を閉じた。自分でも気づかなかったけれど、熱もあったみたいだ。
     そういえば小さい時も熱出したときはお姉ちゃんもこうしてくれたっけ…お姉ちゃんにはいつも迷惑かけてばかりだった。弱っているからか、遠ざかっていたはずの記憶が熱によってより近く感じられた。
     小さい頃の記憶と現在が混じり合って瞼がじんわりと熱くなる。ごちゃ混ぜになった感情が目尻から流れ落ちるのを感じた。

     レイシオの手がそっと動き出して涙でゆがんだ視界が暗くなった。まるで意識を遮断させるかのように額に乗せられた手のひらは瞼の方へと下ろされたようだ。
     たとえ自分が体調が悪かろうとも、これ以上かっこ悪いところを見せたくないと思っていたので、アベンチュリンには少しだけ都合がよかった。
     まだツガンニヤで無垢なカカワーシャでいられた頃、お姉ちゃんの手のひらもこんな感じだった。お姉ちゃんよりレイシオの手は無骨だけど、同じくらいの優しさを感じられる。レイシオの手のひらの感触を瞼からじんわりと感じていると、アベンチュリンの意識が少しずつ、ゆっくりと柔らかくまどろんでいくのを感じ、意識をまた手放した。


    ※※※


     うとうととしていたアベンチュリンがまた眠りにつくのを見届けると、レイシオは手を元に戻した。これで看病はようやくひと段落付いたのだろうか。
     眠りについたとはいえすぐに起き上がって仕事の続きをし始めるかと身構えていたレイシオは大人しく素直に従ったアベンチュリンの様子に少し安心した。
     彼は自身の不調を周りに気づかせないようにするどころか、自分自身に対してですら左手の中に抑え込み、自らを騙そうとする。家族と別れてからのアベンチュリンの半生は全て弱いところを見せてしまうと命取りだったのだろう。だからこそ、今までもそしてこれからもそうやって乗り越えていこうとするのか。

     しかしレイシオはそんなアベンチュリンを見ていられなかった。少しでも異変の片鱗に気づけたのは、自身の観察力ではなく、アベンチュリンが自分を身内として認識し、弱さを見せてもいい相手として距離が縮まったからだろうか。そんな淡い期待を持ちながらも、医者として人の弱っているときに下心でものを考え始める自身の愚鈍具合に頭を抱える。
     こういう時はもっとシンプルに、純粋な気持ちを持つべきだ。

    「早く、良くなれ」

     アティニークジャクが静かだと居心地が悪いし、戦略的パートナーがここまで大人しくされるがままなのも珍しい。
     先ほどはアベンチュリンの宝石のような瞳に涙が零れそうになった時にはどうしようかと思った。いくら博士号をいくつも持っているとはいえ、そのようなシチュエーションをうまく処する対人スキルは持ち合わせていなかった。悪態をつきそうになったものの、咄嗟に自身の幼少期にされた母の看病と同じ方法をとった。苦し紛れの行動にこれが正解だとは思っていなかったが、その瞬間にあの時の母親の気持ちを身をもって知ってしまった。
     
     落ち着いた寝顔で夢の中にいるアベンチュリンの額にキスを落とし、苦しくないように顔にかかったシーツを少し首元まで下げるようにかけ直し、そっと部屋を出ていった。

    ——「ベリタスが早くよくなりますように、羽を休めて愛しの我が子。あなたは笑顔が一番よ。」

    「僕は早く君のよくなった顔が見たい。よく休んでまた笑顔を見せてくれ。」
     幼い時分にかけた母親の言葉を思い出して心の中で同じように祈りの言葉を捧げた。
     その言葉はアベンチュリンの穏やかな寝息とともに静かな部屋に溶け込んでいった。
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    gnsnmta

    DONEレイチュリワンウィーク
    お題:「筆跡」
    収集癖のあるアベンチュリンがちまちまと処方箋になりうるものを集める話。
    ピクシブにも同じものを投稿しています。
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23389333
    よすがとなりうるささやかな紙屑 いくらインターネットの普及によりクラウド化やデータでのやりとりが増えたとはいえ、スターピースカンパニーであっても紙を用いた資料のやり取りは未だ健在だ。特に社外の相手とのやり取りを比較的多く行う部署である戦略投資部では、定期的にシュレッダーや溶解処理が行われていた。
     期日の迫ったプロジェクトも、月末に提出しなければならない請求書や人材奨励部に送る予定の申請書も今は抱えていない。今日は絶好の事務作業日和であった。

    「あっこれ、」
     プレゼン資料と思われるグラフ付きのモノクロの資料に貼られた付箋紙が目に留まる。
    カラフルな付箋紙には流麗な字が書かれていた。

    『作為的な図表、留意するように』

     内容をざっと読み込むとピノコニーに向かう前に行った案件のようだった。相手は特に問題のなさそうな気の良いその星所属の官僚で、このまま合意をしようとした際に念のため向こうの用意した資料を技術開発部に精査してもらおうとレイシオに渡したものだった。
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