泥の花「あなた、不思議な魂を持っているのね」
要圭が足を止めて振り向いたのは、その声がまるで花の香りのように目の前まで漂ってきたからだ。
圭に倣ったのか、清峰葉流火も圭の隣で立ち止まった。葉流火を煩わせてしまったことは、圭にとって少し気まずいことだ。普段、圭は決してそんなことはしないのに、何故だろう、この声は聞き逃してはいけないような気がしたのだ。
「俺たちのことですか」
戸惑いながらも返事をした相手は、白いケープを纏った女性だ。真夏の昼下がりにそんなものを羽織ってるだけで異質なのに、汗の一つもかいていないのが不気味だ。それにこんな住宅街の道端で『占い』なんて開いているのだから、酔狂にもほどがある。
「あなたたち、じゃなく、あなた。向日葵の髪をしているのに、魂は違う色なのね」
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