息をするように恋をした息をするように恋をした
一年生の昇級試験である収穫祭が終わった。今年の若王はほとんど獣を傷付けない異例の若王と呼ばれ、バラムの周りは一気に騒がしくなった。休み時間にはバラムを一目見たがる生徒が押し寄せ、昼休みや放課後はどこで何をしているのかと探される。
入学時から高ランクでありながらも、静かに目立たずに過ごしたいバラムにとっては煩わしい騒がしさだった。
授業を終えた放課後、バラムとカルエゴはわざと遠回りをして図書室へ向かっていた。生徒があまり通らない道には黄色や紅色の落ち葉が幾重にも積もっている。フワフワとした枯葉と時折踏みつぶす小枝の感触が足裏に心地好い。
「随分と取り巻きが増えたな」
「うーん。色々と声を掛けられるけどあんまり嬉しくない。早く音楽祭の練習でみんな忙しくなれば良いのに」
2009