魔法使いの砦美しい青年が旗を振っている。
まるで撃ってみろとでもいうような姿に狙いを定めた。
「やめろあの様子、絶対弾に当たらない自信があるんだ、弾が無駄になるぞ。」
「まさか。見ろよあの青年、背もすらりと高くこのあたりじゃそうそう見ない美しいブロンドだ、しかも学生、モテてモテて仕方が無かっただろう。そんなやつが『魔法使い』なわけが…。」
はっ、と鼻で笑って男は青年の頭に狙いを定めた。
早々に貫かんとばかりに勢いよく放たれた弾は翻ったビロードの旗の表面を優しく撫でるようにして地面に落ちていった。
「『魔法使い』の砦だ…!」
兵の誰かが絶望した声で呟いた。
「これは長い戦いになるな…」
兵士が苦々しく言った。
■魔法使いの砦■
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