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    お茶でもどうぞ

    ウィルアキの2人のみ取り扱い

    相手左右絶対固定

    他カプは絶対に描きません

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    お茶でもどうぞ

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    ハマりたての時に書いたごるせく時空の🌱🔥(パロ)

    続きを書く意思は今のところ…………無いです!ゴメン!

    「てめえも、オレのファンにしてやるよ!」


    街頭ビジョンに映ったニュースの特集の一幕。先日行われたライブでの、1人のメンバーがファンを煽るセリフだった。
    高揚して火照ったように赤い頬。それは彼本人の髪色と大差なく。そしてその頬を伝う汗と、嬉しそうに、楽しそうに細める翠の瞳。
    そのまま他のメンバーにもみくちゃにされている様はとても、愛おしくて。

    「か……わいい…」

    ぽつり、信号待ちをしていた俺の口から出たそれは、すっかり彼に心を奪われていた故だった。



    彼の名前はアキラと言うらしい。本名も分かっていて、鳳アキラ。不死鳥の名を冠している彼は、心底諦めの悪い男のようで。色々な番組を見て所謂「おっかけ」なるものを始めてしまった俺は、すっかり彼のファン、つまり担当になってしまった。

    __仕方ないよね、アキラくんが可愛いんだから。

    はぁ、と溜息を零して店先の花と戯れる。両親の経営する花屋で働き始めてしばらく。立地がよかったのかそこそこ有名人なる人達が来てくれるらしい。
    今まではあまり、テレビを見てこなかったから気付かなかったのだけど、話題のアイドルや女優など、本当にテレビで見る人がちらほらと店にやってくるのだ。

    __それだったら、GSだって来てくれればいいのになぁ。

    なんて…そんなわけない。全員、花…というか植物とは無縁の人間すぎる。第一、俺はアキラくんが好きなだけであって他のメンバーは言うほど気になる訳でもない。寧ろ最近は同じメンバーであるガストって人に解釈違いなんてことを起こしているほどなのに。

    なんでかなぁ、みんなガストくんのこと好きなのに。

    俺だけはそれが受け入れられないらしい。
    それもあって、あまり周りの人と話が出来ない。だからこそ1人コソコソと見ているのだけど。

    「あの、すみません」
    「え?あ、はい!いらっしゃいませ」

    いけない。今は仕事中なんだった。
    声を掛けられてはっと意識を人へ向ける。
    大好きなものに囲まれて仕事が出来るんだから、それでいいだろ、って自分に言い聞かせて。



    「ありがとうございました」

    花束を抱えたお客さんを見送って、また1つ深呼吸。自惚れ、とかでは無いけれど、俺は幾分か見た目がいいらしい。それもあって女性のお客さんがよく来てくれるのだけど…どうも最近、俺と話すことを目当てに来る人が増えている。

    困ったな、俺、そんな身近に会えるアイドルみたいなことしてないのに。

    ああ、少し疲れてしまった。嫌って訳でもないし、接客を基本とする仕事でもあるから不満なんて言ってられないんだけど、それでも。

    「落ち着いてきたからちょっと休憩してくるね」

    エプロンを置いて、店の外に出て。ほんの少しだけ散歩してこようと、ちょっぴり逃げるようにして歩き出した。

    アキラ、の名前でSNSを検索すれば、変装も何もしてないのかすぐに遭遇情報が見つかる。
    こんな近くに居たのか、なんてこともよくあるけど…正直俺は、あんまりそういうのは見たくない。
    だって彼にもプライベートはあるんだし、どこに居たここに居たあんなことしてた、なんて全部書かれてしまうのなんて可哀想だ。
    本人がどう思ってるかは知らないけど…少なくとも、俺はあんまり、好きじゃない。

    人気の少ない公園。
    この時期、この時間は人が少ないからゆっくり出来ていいな。あまり長居も出来ないけれど、ちょっとだけなら。

    きょろ、と周りを見て、人が居ないことを確認して。こそこそとイヤホンを取り出して、最近発売された新曲を再生する。発売されてから何度か聞いていたのもあって、口ずさむことさえ出来てしまう。

    「あ!それ!オレらの新曲じゃん!」
    「ッ、えぁ、!?」
    「聞いてくれてんの、サンキューな!」

    急に話し掛けられたかと思えば、視界に入るのはきらきらと太陽の光に反射する真っ赤な髪。それからキラリと輝く左耳の金属と、綺麗な翠の瞳。

    「え、あ、アキラ、くん…?」
    「あは、なんだよその呼び方、アキラでいいって
    出たばっかりの曲、もう歌えるくらい聞いてくれてんの嬉しい」

    あの日、あの時ビジョンで見た人物が目の前に、俺に向けてへにゃりと笑いかけてくれている。

    本物、だ…!

    驚いて口を手で抑えたまま何も返さない俺が気に触ったのか、むう、と頬を膨らませて聞いてんのかよ、と覗き込んできて。
    近い。距離が、あまりにも。

    「あ、き、聞いて、ます
    ていうか、なんでここに……」
    「休みの日くらいどこいたっていいだろ?
    変装しろ変装しろってみんなうるせえし、伊達メガネ?っての付けて軽く帽子も被ったらなんか気付かれないのか声掛けられなくなったし…」
    「そりゃ、それが変装だからね…
    ……っていうか、変装してるのに話し掛けたらダメなんじゃ」

    人気もほとんどなくて俺くらいしか居ないから良いものの、もし他に人がいたら今頃大騒ぎだろう、休みの日くらい、って言ってるんだから落ち着きたいだろうに。

    「他に人居ねえからいいだろ、嬉しかったんだよ
    オレたちの新曲…しかも、唯一歌ってたの、オレのパートだろ」
    「えっ」
    「へへ、いいだろそのフレーズ
    歌いたくなる気持ちも分かるぜ?」
    「……フレーズも、勿論いいけど…
    俺は、あなたが歌ってるから、好きなだけで…」
    「…、オレが歌ってる、から…?」

    は、と途端に熱くなる頬。
    何を言っているんだ俺は、本人を目の前にして。
    慌てて立ち上がって時計を見れば結構な時間が経ってしまっている。

    「あ、ご、ごめんなさい!
    仕事があるので失礼します!」
    「あ!おいちょっと!」

    ぺこ、と頭を下げて走り出す。
    舞い上がってしまっていたのかも。会いたいな、なんて思っていた人に会えて、しかもあの笑顔を俺だけに向けてくれて。可愛くて、簡単に奪われてしまった心。それが、彼を目の前にしてつい、我慢できなくなったらしい。

    ドキドキと心臓が高鳴っている。こんなの初めてだ。覗き込んできた顔は少し拗ねた顔だったけれど、それもまた可愛くて、あまりテレビじゃ見ない顔だったから、嬉しくて…
    とくとくと弾む鼓動。それが長く続く理由はイマイチ分かっていない。

    店に戻って、己の頬をぱちんと叩く。
    しっかりしろ、ウィル。今は仕事、さっきのは本当に運が良かった、それだけだ。
    もう二度とない事なんだ、しっかり胸に秘めてこれからもファンとして応援しよう。





    「で、オレのパート、他はどこが好き?」
    「……どうしてまたここに居るんですか…?」
    「いいだろ別に!」

    しばらく経って、休日。ここ最近俺の休みの日がなかったから、と1日2日、休みをくれた。別に良かったんだけどなぁ、なんて思うけれど、そういうわけにもいかないし。
    何をしようかと理由もなく公園へ向かえば、相変わらず人は少ない。平日ともなれば尚更だ。運動をしている人がいるくらいで、学生や若い人達なんかは居ないに等しいくらいだ。

    ベンチに腰掛けてううん、と伸びをして、本を取り出す。家で読んでも良いけれど、たまにはこんな風に、外で読むのも悪くない。

    と、一般的な休日を楽しもうとしてしばらく。
    とんとんと肩を叩かれたかと思えば、黒縁の眼鏡とニット帽を被りマスクをつけた男の子がいて。
    はて、こんな知り合い居たっけな、なんて思ったらマスクをずらし、にこ、と笑って。

    「よ、この前は急に話し掛けて悪かったな」
    「ッあき」
    「声出すな!…ったく、この前、話し掛けたり名前出したら変装の意味ねえとか言ったのお前だろ」

    俺の好きなアイドル、所謂推しこと、アキラが目の前にいた。

    そして冒頭に戻り、新曲の良さを聞かせろ、とか、オレのパートのどこがいいか教えろ、とか…なんでこんなこと、と本人に直接言う恥ずかしさを堪えながら言われたように感想を述べれば、時折頬を赤くしたり、嬉しそうにしたりしてくれて。

    かわいい。かっこいいことの方が多いけど、今…というか、この前から見てるアキラはすごく可愛いと思う。
    きっと、メンバーはアキラのこんな一面をいつも見ているんだろうな。

    _____羨ましい。

    「えっ、」
    「あ?どした?」
    「あ、ああ、ううん、なんでもないよ」

    俺は今、羨ましい…なんて思ったのか?
    羨ましいも何も、同じチームのメンバーなんだし当たり前じゃないか、俺なんかよりも、ずっと一緒にいる時間が長いんだし。

    分かっているはずなのに、無性に、思ってしまう。

    悔しい、と。

    「なあ、名前なんて言うの?」
    「……ファンに名前、聞く?」
    「お前だから特別」
    「ファンに特別扱いなんてしちゃダメだと思うけど」
    「じゃあファンじゃなくて友達だったら?」
    「とっ、そ、そんなの許される訳」
    「お前が!…ダメなのかって聞いてんの」

    ぐいぐいと来る瞳はあまりにも真っ直ぐで。
    アイドルのアキラ、というよりは一人の人間の鳳アキラな気がして。

    「俺、は…ダメじゃ、ないけど……」
    「じゃあいいだろ、ほら、名前教えろって」
    「な、なんで俺なの?
    友達って…メンバーは?」
    「……友達じゃねえよ、一緒にいる仲間、ってだけ」
    「それを友達って言うんじゃ…」
    「いいから早く名前教えろよ、あと連絡先、やり方わかんねーし登録しといてくれよ」
    「な、えっ、そんな…って、ちょっ、投げたら危ないだろ!」

    ぷい、と顔を逸らしてしまった。やるまで口聞きません、みたいな…どうしてこんなことに…

    仕方ない、取り敢えず登録…させてもらおう。
    やらなきゃ解放されなさそうだし…仕方ない、仕方ないこと、きっと他のメンバーが気付いたら消されるんだろうな、俺だけが連絡先を持ってるってことになるんだ……そうなったら即消さないと、変なことになっても嫌だし、そうしよう。

    「名前」
    「あ、ええと、ウィルだよ、ウィル・スプラウト
    年齢は19で、両親のやってる花屋で働いてて」
    「…年上かよ、つっても1つしか変わんねえけど…」
    「18歳だよね、アキラ…くんは」
    「呼び捨てでいいって言ったろ、オレもウィルって呼ぶからおあいこ、いいだろ?」

    俺の名前を、俺の好きなアイドルが呼んでくれている。こんな嬉しいことってないなぁ、なんてさっきまでのモヤモヤが一気に消えてしまう。
    それに、人気急上昇中の、引っ張りだこになり始めているアキラが俺の事をきちんと見て話してくれるのが少し、いやかなり嬉しくて…独占してしまっている、そんな……____優越感。

    ……優越感、か。

    「なあウィル、また会えるか?」
    「え?ええと…俺はいつでも、会えるけど…」
    「店の場所教えてくれよ、そしたらオレが行けば」
    「っ、ダメ、それは嫌だ」
    「は?なんで…」
    「2人で、話せなくなるから、それは、嫌だ」

    会えるなら、話せるなら。誰にも邪魔をされない、今みたいな…2人がいい。

    「……2人がいいのか?」
    「2人がいい、他の人に、アキラの時間を取られたくない」

    変な我儘。こんなこと、言うつもりも…持つことさえ、するつもりなかったのに。

    取られたくない。時間だけじゃなくて、アキラ本人を。
    俺に話し掛けてくれる、俺に興味を持ってくれるアキラを、誰にも。

    「…変なの、取られたくないって、なんでそんなこと」
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