イサ兄ショタイサ「にーに、いっちゃうの?」
今にも涙がこぼれ落ちそうな表情で、俺の天使―イサミがぬいぐるみを抱きしめながら玄関までやってきた。白地に赤いラインが入った、胸に丸いランプのついたヒーローのぬいぐるみは俺がイサミと同じ年の頃に買ってもらったやつだ。多少くたびれてしまったぬいぐるみはイサミの腕の中で潰れている。
「ごめんな、早く戻って来いって言われたんだ」
しゃがみこんでイサミの頭を撫でてやる。イサミはぬいぐるみに顔を埋めてしまった。俺がイサミの涙を見たら困ってしまうと思って、涙を見せないようにしたいのだろう。そんな仕草でさえ俺の胸が張り裂けそうになる。だが、イサミの前でそんな事を見せるわけにはいかない。イサミだって辛いのだ、悲しいのだ。それを小さな身体に必死に隠そうとしているのだ。
「早くイサミのところに帰ってこれるように、兄ちゃん頑張るからな」
イサミは分かったと頷いて、少しだけぬいぐるみから顔を上げる。水晶のような涙がぽろぽろと落ちてぬいぐるみに吸い込まれていく。
「いってきます、イサミ」
イサミの身体を抱き締めて、目いっぱいイサミの甘い香りを吸い込んだ。
「にーに、いってらっしゃい」