没のオクバデ 記憶を持って生まれ、しかも同じく記憶を持ったバデーニと巡りあうという、奇跡のような再会をしたのがおよそ一か月前。衣食住は提供してやるから身を粉にして家事をしろ、とかつてのように大学生の俺を引きずり込んでマンションの一室で共に住むようになったのが、三週間ほど前か。
ただいま帰りました、といつもの調子で玄関を開ければ、立ったまま腕を組んで壁に体重を預け、こちらを睨みつけるほどの眼光で見つめるバデーニさんと目が合う。
何かしてしまっただろうか。怒っている...とも少し違うような。おろおろと様子を窺っていると、それを気にも留めずバデーニは徐に唇を動かして名を呼んだ。
「オクジー君、私と付き合え」
「は、い?……ど、どこにですか」
1989