sataa lunta 前を行くヨクサルがふと立ち止まって空を仰ぐので、後に続くぼくたちもつられて上を見る。ひらひら、風の中を舞いながらいかにも優雅に降りてきたのは、花びらではなく、雪だった。
あぁ、道理で。今日はやたら冷えるなぁと思っていたのは、気のせいではなかったらしい。まだ北国の入口だから、こんなのはほんの序の口なのだろうけれど。
他の三人は各々に「わぁ……! 雪だ!」「綺麗だなぁ」「あんまり走り回ると、滑って転んじまうぜ」と三者三様の反応を示している。確かにその通り雪以外の何でもないのだけれど、冬だし、そんなに騒ぐほどのものだろうか。
ロッドユールがやたら首を上に伸ばしていると思ったら、降ってくる雪を口で受け止めようとしているらしかった。さすがに、呆れるあまりつい笑ってしまった。
「ねぇフレドリクソン。ロッドユール、はしゃぎすぎじゃない? ただの雪だよ」
「君にとってはそうかもしれないな。だが私たちが住んでいた村だと、雪なんて年に数回あるかだったからな。 物珍しいんだろう」
そう言われてみると確かに、水分の少ないふわふわした雪がまともに降っているのを見るのは久しぶりかもしれなかった。ここ最近は暫く、比較的温暖な海域にいたから。あの辺りは冬もそこまで厳しくなく、ほぼ一年を通して過ごしやすい気候だった。まさかわざわざ自分の意志で、こうして極寒の北へ向かうことになるなんて、思ってもいなかった。……あの孤児院にいたら、考えられないことだった。
まだ積もってすらいないのに辺りを小走りにを駆け回り始めたとロッドユールと、甥っ子を追いかけながら宥めるフレドリクソンをぼんやりと眺めていたら、首のあたりをきんとした風が一筋通り抜けて、思わず肩をすくめた。雪が降っていると実際以上に冷えているみたいに感じる。これなら船を降りる前に、もっと着込んでくるべきだった。
「うう……寒い……」
首を引っ込めながら、確か持っていたはずとリュックを開けて中を探ると、よかった、ちゃんとマフラーが出てきた。が、引っ張り出してきた勢いでつい取り落としてしまう。落ちた先にこちらが手を伸ばすよりも早く、隣に立っていたヨクサルがしゃがんで拾って、軽く払ってからぼくの首にふわりとかけた。ヨクサルはマフラーの感触を確かめるみたいに、ゆっくり時間をかけて手を離す。膝をつきあわせたままでいると、いつもより低い位置で目線が合った。彼は笑った。
「これからもっと寒くなるぜ」
「……なんで嬉しそうなのさ」
「ふっへっ。ムーミンだって、笑っているじゃないか」
ずっと、冬はこんなに寒くなかったのになぁ。
ただ淡々と目の前を流れていくだけだった季節の中を、今は四人で歩いている。