一年よりも長い夜の話安いアパートの古い階段を音を鳴らして上がり、鍵を開けて誰もいない暗い家の玄関に明かりをつける。
「ただいまー」
そう言うとオレの背負っているキャリーバッグからにゃこがにゃおと返した。キャリーバッグを床に置きチャックを開けると、にゃこ、もといにゃん喜威がぴょんと飛び出る。
「お前もお疲れさん」
にゃこは俺の言葉にお前もな、と言うようにまた短く鳴いて、とてとてと暗い部屋の奥へ1人先に行ってしまった。留守中に異変がなかったかを調べるのはにゃこの仕事だ。オレは部屋の明かりをつけて部屋着を引っ掴んでユニットバスに行った。いつも通りざっと汗を流し髪と体を洗い、泡を落とそうとしてシャワーを手に取りオレははたと気付いた。
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