キューピットは目の前にいる「恭二、みのり、好き?」
事務所のソファで新作家電のパンフレットを眺めていると、向かい側に座ったピエールが無邪気な笑顔で聞いてきた。みのりは、単独の仕事でここにはいない。二つ返事で返すには、その言葉はちょっと重いと恭二は思う。
「ん?あぁ、好きだよ」
「ボクもみのり、好き!」
少し間が空いてしまったが、ピエールは満足気ににこにことしているし、違和感のない返しだったはずだ。きっとピエールが聞いている「好き」は、仲間として、友達としての「好き」だと思う。けれど、そうではない「好き」を抱えている恭二には気軽に口に出せる言葉ではなかった。
「みのり、恭二、好き?」
事務所で恭二の合流待ちをしていたみのりとピエールは、ソファに隣合って座っていた。ピエールの無邪気な質問にみのりは微笑ましいなと思いながら「好きだよ」と笑顔で返した。この気持ちに偽りはない。友人として、仲間として、みのりは恭二を好意的に見ている。
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