距離感 目が覚めたら顔に傷痕があり長い赤毛が特徴の…全裸の男が旬の目の前に立っていた。
「は?」
誰…?いやそもそもなんで俺の部屋に平然と全裸で立っている…?
というか何で俺は朝までぐっすり寝ていた…?
ぐるんぐるんと頭の中を回転させるが段々頭が痛くなり考えるのを途中でやめた。
よく見ると男からはイグリットと同じぐらいの魔力を感じ取れる。
「イグリット…?」
「…!」
ばっと顔を上げ、少しだけ嬉しそうにする。
ぶんぶんと尻尾が見えるような気がしてきた…。
なんだか頭が痛くなってきた旬は「これもシステムの影響か…?」と、とりあえずシステムを疑うようになった。
頭を傾げたイグリットに、流石に服を与えないと色んな意味で危なと自身の服を渡す。
少しだけキツいのか、胸あたりがパツパツになっているのが目に入り、旬はすぐに目を逸らした。
旬の服を貰って嬉しいのか、匂いを嗅ごうと襟を顔まで持っていくイグリットに旬は手を叩く。
「ばか、やめろ、恥ずかしいだろ」
「?」
…なんでだめなんですか見たいな顔をするのはやめろ。
人間の姿のせいでより表情で感情の変化が分かりやすく、旬は余計に調子が狂う。
イグリットってこんな奴だったのか……?それとも人間の姿になった影響なのか?と顔を顰める。
「影に戻る事も出来ないのか?」
「……」
フルフルと横に振るイグリットに旬は重い溜息を吐いた。
「…」
イグリットは何か思いついたようにベッドの上に座る旬の隣に座り、じりじりと近寄る。
だいぶ至近距離になった所で旬はイグリットに気づき、思わず顔を赤く染めた。
「ち、近い……っ」
「…」
「っ!?!?!」
旬の右手を手にとり、甲に軽く口付けをしたイグリットに思わず変な声が出る。
勢いよく手を引き、真っ赤に染まった顔でイグリットを見た。
「ば……ばっ……!」
あまりにも突然の出来事に舌が回らず、言葉にならない。
イグリットは何か機嫌を良くしたのか、今度は顔を近づけてくる。旬は耐えれずイグリットの顔を手で押さえた。
その後どうなったかは言うまでもない―――。