高校に入学してすぐのこの時期は、色んな部活が新入部員を集めるために校内の至る所で勧誘をしている。靴箱から正門までの道は、特に人で溢れかえっていて、前に進むのもやっとだった。
今日もいつものように、勧誘で賑わった人混みを必死に掻き分けていると、人に押されて転びそうになった。(まずい!)と思ったそのとき、誰かによって正面から受け止められたことに気付いた。
「大丈夫?」
頭上から声が聞こえてそっと顔を上げると、ぱっちりとした澄んだ瞳と目があった。
「あ、ありがとうございます!!」
私は慌てて体を起こした。綺麗な顔をしたその人は、フッと微笑んだ。
「君、演劇部は興味ない?」
「演劇、ですか?」
「うん。僕、部長やってるんだ。この後講堂で劇やるから、良かったら見に来てよ」
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