鶯樹の誕生日②/鶯皇蒼と俺が付き合ってから3度目の自分の誕生日。
蒼は今年受験で忙しいと言うのに俺の誕生日を忘れずに祝ってくれた。
元々普段まめにメッセージを取り合うわけでも無いし会うのもお互いが寂しくなってから。そこに蒼の受験が重なったとなったので今年はそんなに会っていなかったのでメッセージで終わるのかなとも思っていたがそんな事なくて嬉しい。
「来年はまた同じ学校か。」
「受かったらそうなるねぇ。学科は違うけどまた同じになれたら会う機会が増えるから嬉しいな。」
来年の今を思い浮かべて微笑む蒼につられて俺も笑みが溢れる。
今の俺の大学生活は、同じ大学に親友である梓々琉もいるのでそれなりに楽しくはあるが来年はそこに梓々琉の恋人である高島と今俺の目の前にいる蒼が入学してくる…予定だ。
「待ってるな。」
「うん、また絶対追いかけるからね。」
そう言う蒼は自信たっぷりにも取れて、きっと彼の今の成績は俺の在学する大学へ合格するには申し分ないのだろう。…勿論、俺は蒼なら絶対に受かると思っているから何も心配していないのだけど。
「それにしても寒いな…。」
「鶯樹先輩は寒がりだねぇ。いつかの今日も同じこと言ってたよ?」
「それは蒼が屋上で何分も待たせるからだろ。」
高校生最後の誕生日、蒼は俺を屋上へ呼び出したものの実際に来たのは数十分後。
俺の身体は冷え切って彼のほっぺたの温もりを分けてもらったのが今となっては懐かしい。
「それは…ごめんねぇ。時間ぴったりについてたんだけど…喜んでくれるかなぁとか、渡すのに緊張してドアがなかなか開けられなくて。」
そんな小さなことに悩んでいたなんて…、あの頃の俺が知ったらそんな事気にしなくてもいいって蒼の頭を撫でていただろうに。無論、今の俺もそう言うが。
「蒼が考えて選んだプレゼントはなんだって嬉しい。何をくれるかも大事かもしれねぇけど、俺は蒼が俺を想ってくれてるその気持ちが一番嬉しいからさ。」
「うん。」
そう言いながらえへへ、と幸せそうに笑う蒼。
…俺にとっては蒼が俺に向けて笑ってくれる、それだけで十分なんだ。
「っくしゅ!……本当にさみぃしそろそろ帰るか。誕生日と言えどあんまり受験生を連れ出したら悪いよな。」
「鶯樹先輩が風邪引いたら大変だもんねぇ。」
「じゃあ風邪ひかねぇようにあっためてくれよ。」
冗談混じりで片手を蒼に出してみると、蒼は数秒固まった後手を繋いでくれた。俺は蒼の指に自分の指を絡める…所謂恋人繋ぎにし直してそのまま自分のポケットにそれを収めた。
蒼もしっかりと握り返してくれて、俺も更に力を込めて握った。
「ん、あったかい。」
横をちらっと見れば少しだけ照れつつも「良かった。」と返してくれる蒼。
あぁ…この愛おしい俺の恋人をどうしてやろうか。
学園に帰っていると言うのに今すぐ抱きしめて離したくない。…そう言ったら困らせてしまうので今はこの満たされた気持ちと、手から伝わる彼の熱で我慢しよう。