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    二十憑き

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    MEMO『私の少年』


    「今思えば、母は恋人達にそれなりの情はあったように思う。もしかしたら、私に対しても、そうだったのかもしれない。ただ、優先順位の一番に自分がいただけなのだろう。そう思うとき、母が少しだけ愛しくなる」#いいねの数だけうちの子の実在しない小説の台詞を書く
    このタグの回答、あまりに言葉足らずかなと思ったので、短編書きました。

    ☆ ☆ ☆
    「あんたはあたしに恩返しするんだよ」

     幼い頃、母は私に何かある度にその言葉を口に出した。
     子どもの私はその言葉を母に対する負債だとは厳密には理解していなかったように思う。
     赤子がやがて歩き始めるように、腹が減ったらパンを口にするように、いつか自然と時が来たら“おんがえし”という行為をするのだとぼんやり認識していた。当時の私には、与えられた情報の数々を疑う発想がなかった。
     当時の私が抱いていた世界とは、世の中には正しいこととそうではないことがあり、にも関わらず正しさは絶対的ではなく相対的で、どの正しさを選ぶかは極めて恣意的で自らの内面と向き合う行為である――そんな複雑さを持ち合わせない世界だったのだ。
     やがて分別を身に付けると、あれは母が私に施していた呪いだったのだと唐突に思い至った。
     母は私に呪いをかけ、自らの祝いを咲かそうとしていた。勿体ぶった言い方をするのなら、きっとそういうことだろう。
     私が知る限り、あの当時彼女には愛を交わす人間が幾人もいた。
     利用しあう関係もあっただろうが、中には本当に母に愛を施す恋人がいないでもなかったように思う。

     “他者を愛せない人間 1400