何度でも。ニコチンが切れた、と言い置いてふらりと部屋を後にした。
嘘は言っていない。
秘蔵の酒は無惨な末路を辿ったが、ジェイがくれた酒はそれ以上に美味かった。仲間たちが作ってくれたピザはそれによく合い、どんどん腹におさまっていった。今日の主役だからと片付けを免除されたことだし、この間にぶらつけば、つまみ用の腹も空くだろう。
喫煙スペースに辿り着いて、ふ、と一服ふかしたところで、よく知る気配が近付いてくるのがわかった。
「何て言って出てきたんだよ」
「出てくる、とそのまま言っただけだが」
少し笑いを含んで問いかけてみても、ブラッドの鉄面皮は崩れもしない。が、いつもは厳しく輝く瞳は穏やかに綻んで見えた。
「パーティーはまだ途中だからな。主役が先に潰れてはかなわん」
「食ってばっかで、全然足りてねえっての。知ってんだろ」
「まあな」
言葉の合間に煙を吐き出し、漂って消えていくその先を静かに見つめる。
「キース」
呼ばれるまま視線を流せば、視界いっぱいに綺麗な顔が広がって、唇に温もりが触れた。
「誕生日おめでとう」
仲間と共に贈られた言葉と同じなはずのに、宿る温度はずっと熱を帯びていて、唇が離れた分だけ追いかける。
もっと、
「寄越せよ」
思いの外強請るような響きになったキースの言葉に、ブラッドは満足そうに笑った。