「壺カルビでございます。カットしますか?」
「お願いします」
2時間の食べ放題。そこに本日やってきたリーマン2人は既に元を取るレベルで食べている。
最初はタン塩にレモンを掛けてチマチマと呑んでいた。食べ放題なのに勿体無いと思っていたら、2杯目のビールと一緒にカルビと白米を頼んでからが凄かった。残っていたタン塩を食べている間にカルビを焼き、キャベツにタレを付けて食べながら待ち、カルビが焼けたら取り皿へと移して次の肉を焼き始める。
カルビ、ロース、ハラミ、モツと続き、イチボが有ると伝えると白米と共に頼み、今ではハチノスを噛みながら壺カルビを待っている状態だ。
早い。
焼くのも食べるのも兎に角早い。
油が付いたトングの交換は既に4度目だし、ビールも同じく4度目の注文。因みに大ジョッキだ。
掻き込むように食べているし、惚れ惚れするほど良い飲みっぷりのリーマン2人。絶対に明日臭うぞ。とは思えど、代謝が良いのか首筋が汗で濡れるほど食べて貰えると、2時間で何処まで食べて呑んでくれるのか楽しみになってきた。
左目に傷のあるイケメンはニコニコしながらビールを煽っているし、向かいに座る三白眼と言うか狐を思わせる顔の人は壺カルビを焼きながら淡々と呑んでいる。
「後30分ですので、ラストオーダーとなります」
フードファイトに近い食べ方をしている2人に恐る恐る声を掛けると、イケメンの方がメニューの後ろの方を見始め、狐顔の方は酒と締めの飯系を見ているようだ。
「パフェ、食って良いか?」
「なら米じゃなくて麺類だな。冷麺で良いか?」
「石焼ビビンバの小さいの有るだろ?」
「あー、有るな。じゃあそれで。酒は?甘いのにするか?」
「カシオレ」
「黒霧あるから俺はソレ」
「一口くれ」
「解ったよ。すみません。石焼ビビンバの小さいのとカシオレ、それから黒霧と、えっとどのパフェだ?」
「苺」
「だそうです」
「かしこまりました」
イケメン、苺パフェにカシオレとか可愛いかよ。と思いながら注文を復唱して席を去る。
「なぁ、この後どーする?」
「夕方に腹の中空っぽにしたって言ったらどーする?」
「そりゃぁ。食わなきゃ、なぁ?」
「だよなぁ」
聞こえてしまった会話から察してしまった。
この2人、この後ホテルに行く気だ。
焼肉の煙さとアルコール臭。最後に食べる甘い物の匂いを仄かにさせながらする気だ!
え、あれだけ呑んで勃つの?出来るの?
イケメンも狐顔も強すぎない?
パフェはホール担当が作る物なので、思わず苺ソースを心持ち多めに掛けて持って行ってしまった。