波間の攻防 視線が吸い寄せられる。たかだか素足だ。しかも、親子ほど年の離れた青年の素足。それなのに。
浜辺の砂を蹴りながら、波と戯れている暁人は無邪気そのもので、後ろめたさが募る。
「けーけ! ねぇ、何でそんなに離れてんの」
「水がかかる」
「え、かけてるのに。道理で届かないわけだ。もっと近づいてよ」
「何ニヤニヤしてるんだよ。やらしい顔しやがって」
「やだ、えっち」
それなのに、暁人は屈託なく笑う。
「エッチって、オマエな」
「ふふ、KKの二の腕に欲情してるの、バレた?」
屈託なく、欲望を語る。
「ねぇ、ここに来る前にね、準備してきたんだ」
視線が絡んだ。熱と湿り気を帯びた空気が二人を包む。
「いつでも出来るよ。ここでする? それとも、宿?」
無邪気だなんてとんでもない。こいつはもう、オレを知っている。オレのスイッチがどこにあるか。どうすればオレが飢えるのか。
目眩がしそうな劣情に、年甲斐もなく流される。
「暁人」
「ん?」
「水がかかった。部屋に帰るぞ」
オマエをこんな場所でどうにか出来る訳が無い。
太陽や、波にすら嫉妬する。それはオレのものだと、醜く、浅ましく。
誰にも、そんなオマエを見せたくない。
「むっつりスケベ!」
「好きだろ? そういうの」
「う……好き、かも」
暁人。オマエが、オレを変えたんだ。
「急ぐぞ」
波を切り裂くように暁人に近付いて、その腕を取る。引き寄せながら腕の中に囲って、歩いた。
暁人は何も言わない。視線を再び合わせると、その目は黒みを帯びて欲情に潤んでいた。
「ねぇKK、したことない事、沢山しようね」
大概、どっちもどっちだ。もうどうしようもなく、オレたちは。