ボーナスをあげよう(けあきデー)「ボーナスを出してやる」
「え、いいよ。僕まだそんなに役に立ってないもん」
暁人が殊勝なことを言ってくるもんだから、オレは思わずその頭を撫でる。子供じゃないんだと反撃されるかと思ったら、予想外の答えが返ってきた。
「これでいいよ、ボーナス」
「あ?」
「僕のボーナス、いま頭を撫でてくれたので充分かなって」
あんまり可愛いことを言うので、オレはそのまま暁人の頭を掻き回すように撫でる。暁人は今度はやめてよとか言いながら、オレを見た。その表情はまんざらでもなさそうで、嬉しげに綻んでいる。
「じゃあ次のボーナスはハグにでもするか」
調子に乗って冗談のつもりで言うと、暁人が驚いたような顔をして、すぐにはにかむように笑う。
「それで、いい」
言われて固まるオレは、とんだ道化者だと思う。
「ばーか。ちゃんと金は受け取っとけ。社畜様か、オマエは」
「え、違うよ。好きなことして、お給料も出て、褒めとハグがついてくるの、最高じゃん」
暁人はどこまで冗談なのか分からないことを言いながら、期待の眼差しでオレを見てくる。オマエ、ボランティアでこんな危険な稼業に首突っ込むのは、あの夜みたいな緊急事態だけで充分だろ。
「ねぇKK」
「何だよ」
「ここまで露骨なのに、気づかないふり?」
暁人は少し屈んで、上目遣いでオレに問うた。それは今、聞くことなのか。混乱したオレは、暁人の鼻を指で軽く弾くと、撫でていた手を離した。
「暁人」
「うん!」
「大人をからかうな」
「からかってな……ん!」
だから、暁人に今したことも完全に意識の外だった。オレは今、暁人に何をした? 確かに、想いがなかったわけじゃないが、オレは一体、何を。
「これもボーナス?」
「それは違う!」
「じゃあ……」
先を越される前に、オレは慌てて口を開く。
「オマエが好きだ」
「僕も」
暁人が花が綻ぶような笑みを浮かべてオレの背中に手を伸ばしてくる。
ボーナスをもらったのは、俺の方なんじゃないのか。
そんな事を思いながら、オレは再び暁人の唇にキスをした。