NOT GUILTY「遠くまできちゃったね」
そういう暁人の手は痩せていて、骨と血管が浮いている。加齢で色素の抜けた肌はいっそ美しく、まるで生まれたてのようなのに、幾重にも皺が刻まれていて、ひどく頼りない。
「オレは、そうでもないみたいだ」
「KKはあの夜のまんま、変わらない」
「暁人」
「それなのに、僕が死んだら死ぬんだね」
「そうだ。それがオマエが招いた呪いだ」
「ごめんね」
微笑みながら謝る顔は幼く、罪悪感など欠片も知らぬかのようだ。いや、罪を感じる必要など、これっぽっちもない。
「オレは幸福だった」
「僕は寂しかった。でも、今、やっと幸せだ」
微笑みが深くなる。
もうすぐ死ぬ、オレの半身。
「KK、手を握ってて」
「オマエこそ、離すなよ」
もうすぐ終わる、オレの仮初めの人生。全てを捧げ、全てを失くした人生。全ての幸せ。オレの、オレだけの。
「幸せだ、暁人」
「僕も、KK」
だから、これは罪じゃない。