煙の行方2 KKに当分一人での仕事は駄目だと言われて、また振り出しに戻ってしまった。でもあの時、あの場で固まって動けなくなってる子猫を見殺しにすることは出来なかった。それにKKはそんな僕を否定するんじゃなくて、僕がもっと強くならなきゃいけないって暗に言ってくれた気もするし、振り出しだけど、少しは前進したと思いたい。
「あれ、KKは」
『仕事だ』
KKはこうして一人での危険な仕事もこなす。その度に僕は腹の底が寒くなるような思いをする。僕がいては足手まといだからと止められたその意図は、危険な目に遭わせないように、だとは分かっているけど。
「早く手伝えるようになりたいです」
『頑張るといい』
エドさんとはこうしてボイレコで会話する。KKには普通に話しかけることもある、と聞いて、物凄い胸騒ぎとソワソワした気持ちが湧いて、焦ったのはつい最近だ。理由は、もう分かっている。
僕は、KKが好きだ。
だから、何というか、KKは魅力的だから、エドさんのそういう行動にも胸騒ぎを感じてしまう。
『そういえば暁人は、煙草の煙を顔に吹きかける行為の意味を知っているか』
「え、知りませんけど」
『KKは教えなかったのか』
「え、聞いてませんけど……もしかして、悪い意味ですか?」
『セックスをしたい相手に、する行為だ。今夜共に過ごさないかと』
真っ白。頭が真っ白になった。
「でもあれは浄化の……」
『KKは分かりやすい。それに、君も』
「え、あの、え、え」
僕はエドさんの顔を見て、すぐに反らした。耳が熱い。顔が真っ赤になってるのが分かる。
『僕は帰るから、君はここでKKを待てばいい。だが、行為は他所で』
「しません!!!」
思いっきり叫んだけど、もうエドさんの顔は見れなかった。玄関ドアが静かに閉まる音がして、僕は一人アジトに残される。
KKはいつ帰るか分からない。どうしよう。もう、普段通りに振る舞うなんて、出来ない。
「どうしよう……」
時計の針の音が、やけに大きく聞こえる。付けっぱなしのPCの唸りよりも、それは僕の意識を支配した。
KKが帰ってきたら、僕はどうしよう?