ハネムーンサラダ 学内のカフェでコーヒーを飲んでいたら、二人組の女の人に声をかけられた。
「お一人なら、一緒にコーヒー飲みませんか」
顔は真っ赤で、声は震えている。もしかしたら、凄く勇気を出してくれたのかもしれない。そう思うと僕は微笑んで、なるべくやさしく答えを返した。
「連れを待っているので、すみません」
女の人は少しだけ泣きそうな顔をして、すぐ笑顔を作った。きれいな人だな、と思った。もう一人の女の人は、不機嫌な顔を隠さずに僕を睨んでくる。優しい人だな、と思った。
「ごめんなさい。変なことを言ってしまって」
「いいえ、構いませんよ」
「暁人」
ちょうどそこに、KKが来た。不機嫌そうにしていた女の人が口を開く。
「二人と二人でちょうどいいじゃないですか。お話しましょうよ」
「いえ、僕らはこれから」
「二人で出かけるんだ。すまねぇな」
KKが僕の台詞を奪うように言うと、眉毛を下げて一言。
「たまのデートなんだ」
僕は驚いてKKの顔を見る。KKは一瞬僕を見ると、
「行くぞ暁人」
と前を歩き出す。後ろ姿からでも、耳が赤いのが見える。
「ごめんね、恋人が来たから、僕は行くね」
小走りにKKを追いかける。追いつくまでの数瞬が、とても幸せで。うっかり繋いだ手を、KKが握り返してくる。
幸せで。
ごめんなさい。多分、僕を好きになってくれた人。
僕は、この人じゃないと、生きていけないくらい、この人が好きなんだ。
「躱されたのかな。何も男の恋人がいるなんて言わなくても」
ついてきてくれた友人に言われて、私は苦笑いしてしまった。だって分かったから。
「ダメ、あれはね」
どう見ても。
「二人っきりにしてくださいってオーラ、出てたよ」