おかしなふたり「大体さ、今時の若者って何!? 僕は僕だろ!?」
暁人は普段柔和で人当たりが良いが、怒りのスイッチが入ると止まらなくなることがある。
「オレが悪かった。もう機嫌なおせよ」
「悪かったと思うならちゃんと謝って! 悪かったは謝罪じゃないし、ご機嫌取りで謝られてもさぁ!」
「だから悪かったって……大体何だよ。オマエだってオレのこと、妖怪DVDおじさんとか言ってたろ」
「それは事実! KKのは不当なカテゴライズ!」
「屁理屈言うな」
「屁理屈言ってるのはKK!」
この後十分に及ぶオレたちの小競り合いは、日頃思っていた引け目をオレから最悪な形で引き出した。
「じゃあ別れるか」
こんな頑なで、面白みのないおっさんから、自由にしてやるよ、暁人。
日頃から思ってたことだ。好い機会だ。別れよう、暁人。
それが一ば————
「絶対に別れない! 別れるわけないだろあんたみたいないい男と!!」
は?
「あんたは最高だ! カッコいい! 強い! 正義感に溢れてて子供に優しい! あと顔! 僕はその顔と体が大好きだ!」
……は?
「絶対にKKと別れるなんてないからね! いい加減自尊感情高く持って!!」
「あー……暁人?」
「何!?」
「オマエ、オレにめちゃくちゃ惚れてるんだな」
「今更なに言ってんの! じゃなかったら抱かれたりしてない!」
暁人は普段温厚で人当たりがいい。でもそれ以上に。
あの夜あの渋谷で、オレに取引を持ちかけたり、百鬼夜行に飛び込んでいく、飛び抜けて度胸のある————
「伊月暁人様」
「何!?」
「愛してる」
「僕も!!」
割れ鍋に綴じ蓋。オレたちのことかも知れない。
強く強く、心から、そう思った。