灯す火(けあきデー) あの夏から、暑いと思ったことがない。彼岸の食物を食べたからか、亡霊に取り憑かれたからか、分かりはしないが暁人はあれから、冷えた空気を纏って生きている。夏でも汗一つかかず長袖を着て、上着まで羽織る暁人のことを、友人は羨ましがったり、気味悪く思って離れたりと様々だったが、暁人自身は特に気にしてはいなかった。
「お前、またタバコ吸い出したんだな」
「何で? 吸ってないけど」
「そうかぁ? お前夏になるとタバコ臭えぞ。特にこの時期すげえ臭う」
言われた暁人は、思い当たるフシしかない。しかしだからといって、喜ぶこともできない。
そんなふうにマーキングしていくくせに、今まであの男が暁人の前に現れたことは一度もないのだから。
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