ほりだしもののやつ①自負してもいい。
オレは、その国一の画才だった。
オレの描く風景画は、実際の景色よりも美しく鮮明で。
艶やかな色合いに潜む慎ましやかな影は、通りすがる浮浪者すら目を引かれる。
オレは、己の腕に自信があった。
皆に言い張るような傲りなどではなく。
かと言って己を信じ切り、研鑽を怠けることはなく。
ただ、常に上へ上へと高みを目指す画家であった。
◇
しかしある時期を境に、絵が売れなくなってしまった。
人気が低迷し、それを疑問に思いつつ大通りを歩いてた時のこと。
行きつけの画材屋の前で、数人の男たちが群れて話をしていた。聞くつもりなどなかったが、その話は意図せず小耳に入り込んできた。
「東の国から来た孫というヤツが、これまた辺鄙な絵を描くそうで」
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