コノノイ♀ドレスから拳銃取り出すやつ狙いはコンパスのアレクセイ・コノエ大佐である。
コンパスなる組織はプラントの、果てはコーディネーター全てに対する背信であろう。我らコーディネーターとナチュラルは相容れるものではない。そう、彼らから仕掛けてきたのだから。
であるにも関わらずその背信の象徴たるコンパスなる組織においてトップを務めるのは我らが象徴歌姫ラクス・クラインであるというから許し難い。何をどう言いくるめたと言うのか。彼女を騙したのは誰だ。ナチュラルの言になどだまくらかされる彼女ではあるまい。いくら若いとはいえ聡明だ。彼女とともにいるキラ・ヤマトか?しかし、あの男はラクス様の下僕のようなものではないか。であるならば、コーディネーター側の実質トップ、アレクセイ・コノエ大佐によるものだろう。あの男は目立った戦績もないが兵からの信望は篤いと聞く。それはなぜか。口が上手いのだろう。人を巻き込み自身の意のままにしようとするのだろう。同じコーディネーターの言であるならばラクス様とてまだ年若く分別がつかないこととてあるだろう。そう、全てはあの男が悪いのだ。そして、その下につくアルバート・ハインライン。彼の能力を使えることもラクス様に対して悪影響を与えるのだ。そう、名門ハインラインさえもだまくらかしたあの男ならば、ラクス様のことさえも同じように扱えるだろう……
――そして、その考えは間違っていない――
アレクセイ・コノエ大佐の恋人はナチュラルだ。さもコーディネーターと同じだと言わんばかりにパーティーの間中アレクセイ・コノエ大佐にひっついていたが、明らかにナチュラルだ。
あの男はやはり自分の欲のためにラクス様を洗脳したんだ。
俺の雇い主もそう判断した。
だから、このパーティーの間に、あの男を殺さなければ。
あの男の何がいいのか。何が優れているというのか。ただの色ボケしたオッサンじゃないか。パーティーの半ばで抜け出しこのような裏で恋人とキスをしている。
アレクセイ・コノエなる男も男だが、この恋人の女も女だ。抜け出して裏で盛るなど羞恥心の欠片もない。これだから野蛮なナチュラルは。きっとこの女が誘ったんだな。それこそハニートラップの可能性とてあろう。気にしないのも色に溺れ過ぎだ。貴様一人で我らコーディネーターの評判を落とすのも気分が悪い。
誰も見ていないと思って何度も角度を変えてキスをしやがる。女も目を閉じないのは情緒がないのか、それとも野外なことを一応気にしているのか?
いや、気になどしているわけがないか。肩口に顔を隠そうとして恥じらってるつもりか?右足を曲げ男に絡むようにして、スリットから手を入れられるのを受け入れている時点で今更何を恥じらうっていうんだ。
色ボケジジイは何かを言って恥ずかしがってる女のスカートの中をまさぐる。
こんな野外でおっぱじめる奴でよかったよ。お前を殺すことになんの躊躇いも無くなるからな。
この位置からなら確実にやれる。狙いをアレクセイ・コノエの頭に定める。
その瞬間、俺の銃が弾き飛ばされた。
一瞬呆気にとられる。何が起きたかわからない。銃を取り直そうと慌てた所、俺の頬の横を風圧が掠める。
恐ろしくなって前を確認すれば、狙っていたはずの男と目が合う。
いつの間にかその手には銃を持ち、隣の女も後ろからこちらに狙いを向けている。
銃すら置き去りにして、慌ててその場を走って逃げた。
「使いたくはなかったんだけど」
「ノリノリに思えましたが?」
コノエとその恋人ノイマンは襲撃者が逃げたのを確認しお互いの銃を返し合っていた。
「そりゃいくら油断させるためとはいえ知らない男に君の肌を見せたんだから」
「そんなに見えてないと思いますが?コノエ大佐の手があったんですから」
取り出されたときと同じように右膝を立て太腿のホルスターに戻そうとする。
「待ちなさい……熱いだろう」
「一、二発ならそんなに熱は持たないかと」
制止するコノエに不思議そうな顔を向ければ、またスカートの中に手を入れる。
「今度はセクハラですよ?」
仕舞うより先にホルスターを手で塞ぐ。
「しばらく貸しなさい」
「護衛から銃を奪おうとしないでください」
少しムッとしたノイマンに、微笑みながらホルスター横の柔肌を軽く撫でる。
「セクハラの誹りは甘んじて受けるから、火傷させないでくれ」
「多分もう冷えてます」
未だ任務が抜けないノイマンは冷たく睨む。この強情で真面目な恋人は、これ以上は甘い雰囲気を許してはくれないだろうと諦めてコノエはスカートから手を抜く。やれやれ、と言った様子でノイマンは今度こそホルスターに銃を戻した。
「人が来るたびキスして、一体どれだけの人に見られたって言うんだか……」
「本当ならそう言うプレイも悪くはないかもね?」
「悪いですよ!!」
下世話に茶化す言葉にノイマンは真っ赤になる。やっと恋人に戻ったかと、コノエはクスリと笑った。
「せっかくのドレスアップだ。終わったら堪能させてもらおうかな」
「高かったんですよ?!」
「ん?何を期待してるんだい?」
「知りません!!」
早足で先に行こうとするノイマンを止め、コノエは改めて腕を取らせ腰を抱いた。