Galateia この本丸の近侍である山姥切国広が戦場に出陣するのを、今まで一度も目にしたことがなかった。彼は専ら審神者の秘書のように付き従い、黙々と仕事をこなしている。誰かが「どうして出陣しないのか?」と聞いても曖昧に濁し、「主の命令だからな」と少し困ったように答えるばかりだった。
ある日、彼が『開かずの間』と呼ばれる部屋に入るのを見かけ、好奇心から扉の隙間から覗き見てしまった。するとどうだろう。彼のなめらかな象牙色の肌の下から、鋼色の無骨な金属が物々しく剥き出しになっている。
鋼色をした背骨や首の骨は大小何本もの管で繋がれ、さながら糸で吊られた操り人形のよう。元来表情の乏しい能面のような白い顔は今は生気すらなく、瞬きすることを忘れたヴィリジアンの瞳はただ光を反射するばかりの硝子玉のようだった。精巧ではあるが一目で『物』だと分かる無機質さ。これは山姥切国広に似せて造られた機械人形の類だろうか。否。
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