【カム隼】ラプンツェル背中が熱い。
炎の勢いはまるで衰えることなく、狭い吹き抜けの中を喰い尽くすように上へ上へと浸食してくる。
階下はもう火の海だろう。どうにもならずに吹き抜けに沿うように作られた階段を、隼人を抱きかかえたまま駆け上がる。
力が入らないらしい長い脚のせいでバランスを取りにくいが、カムイの力なら大したことはない。
ぐっと首にかけられた腕に力が籠る。
「カムイ」
柄にもない小さな声が何を伝えようとしているのかわかってしまって、絶対に目を合わせるものかと目線を上げる。
どうせ俺を置いていけとか、ろくなことを言わないに決まっている。
隼人の声を耳に入れるつもりがないことを、カムイのその顔で悟ったらしい。
小さく笑うと、灰で汚れた頬を拭ってくれる。
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