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    heki9chanko

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    創作カクテルのために、勢いで書いたSFアヴァリュノエンディング
    お気に入りの死にネタ

    #ネバワン
    neverwang.
    #うちよそBL
    privateBl

    SF死亡√ アヴァッさん視点しくじった。
    使い過ぎた体はいう事を聞かず、立ち上がろうにも四肢に力が入らない。
    それでも、なんとか這いずって出口へ向かおうと藻掻く。

    それまで途切れていた通信機から、ザーザーとノイズの音が耳に届く。
    『ア…―さん…ッ!』
    聞きなれた、諜報部員の声が聞こえる。
    まだ通信機が壊れていなかった事に、安堵した。

    「この、建物に爆弾を、しかけた…。早、く…に、げろ」

    『…でも…それじゃアヴァさんが…!!』
    と諜報部員があからさまに動揺する。
    当たり前か。
    だが、建物の崩落したこの場所を見つけ出すには、どう考えても時間がない。
    「…俺の事は…かまうな…。自力で、脱出する。経路だけ、教えろ」
    そう言って、俺は通信機の電源を切った。

    その言葉は嘘ではなかった。
    だが、もう自分に時間がない事も、どこかで分かっていた。

    ふと、リュノの顔が脳裏を過る。
    この作戦に参加する前、別れる事に不安そうな顔をしてたな。
    だから俺は『大丈夫だ。すぐに戻ってくる』と約束したんだ。
    それでもアイツは渋っていたから、
    俺は任務に行く前に、『終わったら、どこか行くか?』と尋ねた。
    『…星空を、見に行きたい』とリュノは言っていた。
    俺はその頭をクシャッと撫でて、『わかった。連れて行ってやる』と言った。
    その約束を破ったら、アイツはきっと泣いてしまうだろう。
    それだけは、絶対にダメだ。

    俺は残りの力を振り絞って、脱出経路を目指す。
    すでに手足の感覚はなく、血の滲んだ視界もかすみ初めていた。
    けれど、這いずってでも、戻らなければ。アイツの元に。

    頭の中に、微かに流れてくるリュノの声が聞こえる。
    何かを言ってるはずなのに、うまく汲み取ることができない。
    送り返したいのに、頭の中に靄がかかったみたいに上手く行かない。
    いよいよもって、呼吸も苦しくなってきた。
    自分の荒い呼吸が耳障りだ。


    次の瞬間、視界が歪み、一瞬目の前が真っ白になった。

    俺がはっとして顔をあげると、少し離れたところにまだ幼いアイツの姿があった。
    まだ何も見えなかった頃のリュノが、不安に泣きはらしながらしゃがみこんで、必死に手を伸ばしている。

    アイツは、昔からそうだった。
    培養されていた水槽から出された頃、目が悪いせいで自分がどこにいるか分からず、すぐにぐずり始めてた。
    リュノの癇癪が起こると、機械が次々と壊れて、研究員たちが焦っていたもんだ。
    研究員達には、言葉が喋れないリュノがどうしてそんな状態になるのか分からなかったみたいだが、俺には確かに『怖い、助けて、アヴァは?どこにいるの?』という叫びが聞こえてた。

    だから、その手を掴んだんだ。
    「俺は、ここにいる」と教え、手を引いてやれば、すぐに泣き顔が笑顔に変わった。
    研究所しか知らなかったガキの頃の俺は、それを表す言葉を知らなかったが、あれが『華やぐ笑み』ってやつなんだろうと、外に出た今なら言える。
    その笑みを、もっと見たい。

    何も感情も湧き起こらない俺が、唯一暖かさを覚えるのが、リュノの感情だった。
    アイツが怒りを覚えるなら、俺が変わりにぶつけてやる。
    アイツが悲しみにくれるなら、俺がその手を握ってやる。
    アイツが幸せだと感じる全てのものを、俺が全部与えてやる。

    だから、リュノ…泣くな。
    真っ暗な世界でも、俺がその手を引いてやるから。
    二人でいれば、何も怖くないだろ?
    俺だけに見せる、あの笑顔を、もう一度見せてくれ、リュノ。

    近づこうとすると、さっきまでの鉛のような体は嘘みたいに、立ち上がる事ができた。
    驚いて自分の体を見下ろせば、傷は癒え、リュノと同じくらいの小さな体に変わっていた。

    その事に違和感を覚えることもなく、俺は手を伸ばし、その差し出された手を重ねた。
    涙で濡れていたリュノの顔に、ふわりと笑みが戻ってきた。
    ああ、そうだ。俺が見たかったのは、その笑顔だ。

    大丈夫だ。俺はいつでも、お前のそばにいる。
    お前が笑ってくれるなら、俺はどこでも駆けつける。
    お前を置いてったりしないから。

    いつの間にか、俺もリュノも成長した姿に変わっていた。
    視力を得た空のように青い瞳が俺を見つめ、嬉しそうに微笑んでいる。

    俺は、帰ってくることができたんだな……。

    『おかえり、アヴァ。ねえ、約束、ちゃんと覚えてる?』
    リュノが小首をかしげて俺を覗き込む。

    『ああ…』
    俺はその細い身体を引き寄せて、その唇に口づけを落とした。
    柔らかな唇から体温が伝わり、リュノは確かにそこにいるんだと感じた。
    細い体を、めいいっぱい抱きしめると、リュノの腕にも同じように力がこもる。
    唇を離した俺は、抱きしめていた腕を解いて、その手を握りしめた。

    『星空見たいって、言ってたよな。連れて行ってやるよ』

    そう言って、俺はリュノの手を引いて歩き出す。
    リュノは急ぎ足で歩幅を合わせて、俺の隣をついてきた。
    俺達を邪魔するもの、もう何もない。

    行こう、俺達しか知らない、二人だけの星空を見に。
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